あの山も風でとべる
* * *
微妙に気まずい空気を打ち消すように、不自然な程に明るい声で、占い師は言った。
「まあまあ、ご心配なさらずに。カードは嘘をつきませんから」
白い手が、伏せたカードを素早く切り混ぜると、机の上に十四枚のトランプを綺麗な扇状に広げる。
「では始めましょう。まずそちらの方から」
促されて女性の手が一枚のカードを選ぶ。
「まだ見ないで。次、どうぞ」
同じようにカードが広げられ、男が選んだカードを手前に引く。
「それでは同時にめくってください。はい」
カードを裏返すと、女性はクイーン、男性はキングの絵柄だった。
女性は驚いて口に手を当てた。男性は、内心では緊張していたらしい。ぎこちない笑みを隣へ向けた。
「ほ、ほらな。俺たち相性バツグンだってよ」
「それは違いますね。キングは表の顔です」
水を差す占い師の言葉に、男が怪訝な顔をする。
「どういうことだよ?」
「答えはカードが知っています。もう一度キングを伏せてください」
男は渋々言われた通りにする。横では女性がその様子をじっと見ている。
「あなたが選んだカードはこれですよね?」
「そうだよあんたが一枚引けって言うから・・・」
「いいえ。あなたは二枚のカードを引きました」
「何?」
長い衣の袖から白い左手がスッと伸び、伏せたカードに重ねられる。そのまま手を横にスライドさせ、再びゆっくりと手を持ち上げると、もとあったカードの横に、もう一枚のカードが現れた。
男が目を見開く。
「そんな・・・俺は確かに・・・」
「あなたの正面にあるのがキング。表向きの顔です」
男が目の前のカードを裏返すと、それは先ほどと変わらずキングだった。
「そしてその横にあるのが、あなたが本当に選んだ一枚。あなたの本心です」
占い師の喋り方は相変わらず淡々としている。男は震える指で、もう一枚のカードをめくった。
女が小さく悲鳴を上げる。
男の持ったカードの中で、悪魔が嗤(わら)っていた。
微妙に気まずい空気を打ち消すように、不自然な程に明るい声で、占い師は言った。
「まあまあ、ご心配なさらずに。カードは嘘をつきませんから」
白い手が、伏せたカードを素早く切り混ぜると、机の上に十四枚のトランプを綺麗な扇状に広げる。
「では始めましょう。まずそちらの方から」
促されて女性の手が一枚のカードを選ぶ。
「まだ見ないで。次、どうぞ」
同じようにカードが広げられ、男が選んだカードを手前に引く。
「それでは同時にめくってください。はい」
カードを裏返すと、女性はクイーン、男性はキングの絵柄だった。
女性は驚いて口に手を当てた。男性は、内心では緊張していたらしい。ぎこちない笑みを隣へ向けた。
「ほ、ほらな。俺たち相性バツグンだってよ」
「それは違いますね。キングは表の顔です」
水を差す占い師の言葉に、男が怪訝な顔をする。
「どういうことだよ?」
「答えはカードが知っています。もう一度キングを伏せてください」
男は渋々言われた通りにする。横では女性がその様子をじっと見ている。
「あなたが選んだカードはこれですよね?」
「そうだよあんたが一枚引けって言うから・・・」
「いいえ。あなたは二枚のカードを引きました」
「何?」
長い衣の袖から白い左手がスッと伸び、伏せたカードに重ねられる。そのまま手を横にスライドさせ、再びゆっくりと手を持ち上げると、もとあったカードの横に、もう一枚のカードが現れた。
男が目を見開く。
「そんな・・・俺は確かに・・・」
「あなたの正面にあるのがキング。表向きの顔です」
男が目の前のカードを裏返すと、それは先ほどと変わらずキングだった。
「そしてその横にあるのが、あなたが本当に選んだ一枚。あなたの本心です」
占い師の喋り方は相変わらず淡々としている。男は震える指で、もう一枚のカードをめくった。
女が小さく悲鳴を上げる。
男の持ったカードの中で、悪魔が嗤(わら)っていた。