ハロウィン神戸
かぼちゃのお化けを小さなぬいぐるみにした、ハロウィン用の頭に飾る変身グッズだった。
LEDの小さなライトが点いていて、スイッチを押すとオレンジ色の光が点滅する。
「やだ、かわいい。どうしたのこれ?」
「変身するのに似合いそうだったから買ってきた」
「あら、この髪飾り私の帽子にぴったりだわ。レースのリボンがかわいい」
裕美子は帽子のつばの上に髪飾りを乗せて、鏡を向いてスマイルを浮かべた。
「どう?」
「うん、かわいい。また若く見える」
「やだ、若く見えるじゃなくて、まだ若いのよ・・」裕美子は笑いながらまた鏡を見た。
「僕のはこれなんだ」拓夫はどくろが浮き出たゴム製のおもちゃのようなネクタイを裕美子に見せた。
おどろおどろしいデザインはハロウィンの怪しい夜にぴったりだった。
シャツの上からルーズにどくろのネクタイをつけると、いっぺんにカジュアルな遊び感のあるスタイルになった。
「フフッ、面白~い。気分はハロウィンね」
「ああ、これで町に繰り出そう」
二人で歳がいもなく、子供のおもちゃで心がうきうきになった。
拓夫と裕美子は、フロントまで降りると仮装した子供連れの団体と出会った。
魔女の黒いつばの大きな三角帽子を被った子や、仮面をした子、マントをして魔法の杖を持った子供達がはしゃぎまわってた。
「かわいい・・」裕美子はそれを見て微笑んだ。
「僕たちも変身してんだぜ」と拓夫は、小さな子供に向かって自分のネクタイを見せびらかした。
ホテルではハロウィンの特別ディナー会を催してた。
海が見える開放感のあるレストランは多くの人たちで賑わっていた。
フロントロビーを抜けて回転ドアをすり抜け、タクシー乗り場に行くとタクシーは暇そうに並んでいた。
すぐさま1台のタクシーが目の前に止まった。
「近いんですけど、中華街の方まで」