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天空詠みノ巫女/アガルタの記憶【零~一】

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               ☆

 二人は帰宅するため、校舎の階段を下りていく。
「ねえ、織子……あいつ、あんたになんか耳打ちしてたよね?あれ見た瞬間、なんだかムカついたんだ……。あの女、なに言ってたの?」
「えーっとねー……。ああ、香津美に河童の話、聞いてごらんって。 たぶん、まだ覚えているはずだからって」
「――!」
 香津美は絶句した。
「なに?どんな話?」
「……し、知らない……何の話?全く身に覚えがないわ……」
 急にキョドる香津美を見て織子の直感レーダーは、彼女が何か重大な隠し事をしている可能性を察知した。
「ねー香津美ー。河童って、あのカッパ?ねえ?ねえ?オリコ、とっても興味津々なんだけどー!」
 香津美は、織子の頭からピコピコと動く『猫耳』が生えているのが見えた。こうなると織子のシツコサは、想像を超えた粘着性を持つことになる。
「ねーってば、ねー香津美っちー。カッパを見たの?それとも会ったの?やっぱ、頭に皿あった?体は緑色してた?水掻きついてた?甲羅しょってた?ねー教えてよー!さをりんが香津美に聞けって言ったんだよー!」
(『さをりん』ってなんだよ!あの女ー!何でそんなことを!)
 生徒玄関まで来た時、香津美の『イラッ』は限界を迎えた。
「あーもー、うっさい!!」

 ガン!!!

 帰宅生たちは一斉にその音へと注目する――見ると、香津美のバット(正確には武山のバット)が、織子の顔面左数ミリのところで壁にめり込んでいた。
「へっ?」
「……河童?ええ、見たけど?……でもね、相撲も取っちゃいないし、尻子玉だって抜かれちゃいないわよ!!」
「あ、あれー?……ちょ、ちょっと、香津美さん?……と、とりあえず落ち着こう……っか?……ね?」
(えーん!泣、香津美キレたー!超コエーよ!尻子玉ってなにー?香津美、超詳しいーけど、なんか響きがひわいでやだー!超聞きたいけど、超聞けねー!でもなんでカッパが地雷?さをりんのバカー!!)

「中学から一緒の……」 ガン!
「あんたにだって話したことないのよ……」 ガン!
「もちろん、あんたにだけは……」 ガン!
「絶対秘密にしておこうって……」 ガン!
「心に決めていたんだけどさ……」 ガン!
「そんな私の秘密を……」 ガン!
「なんで、あの女が知ってんのよ?……」 ガン!
 香津美が呟きながらバットを振り下ろす度、コンクリートの壁はどんどんと削られていく。
 身の危険を感じた織子は、この危機を回避するため思いつく限りありとあらゆる手段を講じたのだった。
 サヲリの足は水虫に違いない……とか、
 今朝の星占いで、最悪だったのは牡羊座だった……とか、
 香津美のラッキーアイテムは、金属バットじゃなくて黄金バットだった……とか、
 さっき屋上でUFOを見た……かもしれない……とか、
 所詮、人生なんてそんなもんだ……とか……云々かんぬん……。
 この時、香津美の頭から炎が引くまでに、小一時間は掛かったという。