故障
故障
巨大な機械は停止してどしゃぶり雨のような騒音もおさまると、工場内は雨上がりの静寂に包まれていた。その静けさの中から安全靴の歩く音が僅かに響く。空間から騒音が消え去ると、その空間がとても広くなったような錯覚を覚える。
どうにも機嫌がなおる様子はなかった。赤帽の男は大小の工具と油差し、携帯工具箱を携えて機械の腹の下に潜り込んでいる。まったく厄介。
機械後方のローラーで検品をしているパートのオバサン二人は、テーブルの上に溢れかえった不良品を慌ただしく整理し、検品、分類の作業を行っている。工場ののあちらこちらに基準を超えた材料が注入されている商品が山積みになっている。
動きを止めた巨大な機械の底からは低い溜息が洩れてきた。