「夢の中へ」 第十四話
「作り話じゃないよ。今話を聞いて驚いているんだから。こんな事って・・・あるんだ」
「私の話を聞いてくださいませんか?母は信じてくれないんです。どこかで会えませんか?」
「いいよ、今夜は夜勤だから朝まで仕事している。学校に行く前においでよ。6時には終われるから。そうか休みの日にしようか?」
「明日の朝に行きます。学校は・・・体調不良と言うことで今週は休みます。母にそうお願いしてあります」
「そうか・・・じゃあ、明日な。まどかちゃんってどんな子か楽しみだよ」
「そういえば名前聞いてませんでした。教えてください」
「そうだったな。佐伯って言うんだ。名前は・・・かっこよくないから会った時に言うよ」
「はい、私も楽しみにしています。歳聞いていいですか?」
「18だよ」
「大学生ですか?」
「フリーターだよ、ハハハ・・・まどかちゃんは何年生?」
「三年生です」
「三つ違いか・・・」
「どうかしました?」
「いや、なんでもない・・・」
佐伯は何か隠しているような含みでそう言った。
翌朝訳を母親に話してまどかはコンビニに出かけていった。
立っている後姿を見て電話の相手だとまどかはすぐに解った。
「まどかです」
そう声を掛けて振り向いた佐伯を見て、まどかはハッとした。
「藤次郎さま!」
「まどかちゃん!どうして俺の名前を知っているんだ?」
まどかはもう声にもならなかった。涙がどんどんこぼれてその場にうずくまるようになってしまった。
「大丈夫か?どうした?かっこ悪いから立ってくれ。頼むよ」
「ゴメンなさい・・・佐伯さんが夢の中で仲良くなった人と・・・そっくりだったから、驚いたの」
「訳がありそうだね。話してくれるかい?」
作品名:「夢の中へ」 第十四話 作家名:てっしゅう