【無幻真天楼第二部・第三回・参 かぼちゃっちゃ】
「マホ…?」
「摩護羅迦(まごらか)…;」
京助の言葉にかぶるように緊那羅が言った名前
「…まごらか…?;」
「マホ?;」
緊那羅が言った名前を京助が繰り返して京助が言った名前を緊那羅が聞き返した
「久しぶりだな緊那羅」
戸口からこちらを睨んだまま緊那羅に摩護羅迦と呼ばれた人物が言った
「…人違い…か?;」
京助が呟く
「マホって誰だっちゃ?」
「あーマホっていうのはお前迎えに行ったとき向こうで世話になった奴でさ」
聞いた緊那羅に京助が答えていると緊那羅が京助の視界から消えた
「ちょ…摩護羅迦っ!!;」
「お前誰だ? 緊那羅と随分仲良さげじゃないか?」
じたばたと暴れる緊那羅を腕に抱えた摩護羅迦が京助を睨む
「誰だって…お前…」
少しムッとした顔で京助が摩護羅迦を見る
そのムッはいつものムッとは少し違うように感じた
ただのムカつきのムッじゃなく
昔に感じたムッに少しだけ似ていた
「…あれ…?」
じっと京助を見ていた摩護羅迦が睨むのをやめてツカツカと京助に近づいてきたかと思うと至近距離で京助の顔をじーっと見る
「…ナンデスカ…;」
「お前…どっかで…」
京助の鼻と摩護羅迦の鼻がくっついた
「お離れになってくださいましぃぃぃぃッ!!」
今まで忘れられていた存在を取り返すかのように響き渡ったヒマ子の声
と同時に緊那羅が摩護羅迦の腕をすり抜けて京助の前に立った
「大丈夫ですか京様ッ!!」
ヒマ子が鉢を引きずりながら京助に近づく
「緊那羅…そいつ…」
「栄野京助だっちゃ」
「栄野…ちょっといいか?」
「許可」
摩護羅迦がハイと挙手すると京助が指名した
摩護羅迦がまた京助に近づく
「お前…まさかあの時の変な羽生やして宮に行きたいとか言ってた…」
「…やっぱ…お前マホか…?」
京助と摩護羅迦の会話を聞く緊那羅とヒマ子が顔を見合せて首をかしげた
「知り合い…なんだっちゃ?」
緊那羅が京助と摩護羅迦を見て聞く
「知り合いってか…」
「俺のお気に入り」
京助の言葉を遮った摩護羅迦がにこーっと笑って京助の首に腕を回すと緊那羅がなんとなく面白くないような顔をした
「あでも緊那羅お前は別格でお気に入りだからなっ」
摩護羅迦が慌て言う
「だから安心しろ緊那羅」
「放せ;」
へらへらっと笑う摩護羅迦の腕を京助がひっぺがした
「順番でいうと緊那羅が一番だからなっ」
「はいはい…;」
緊那羅がため息をついたあとちらっと京助を見る
目があった
と思ったら京助が目をそらした
「あ…」
思わず声がでた緊那羅が京助に向かって足を一歩踏み出す
「会いたかったんだぜ緊那羅ーすっごく」
摩護羅迦が緊那羅と京助の間をさえぎって緊那羅の手を握った
「あら京様どちらに?」
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回・参 かぼちゃっちゃ】 作家名:島原あゆむ