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犬一匹物語 『危機一髪』

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 その日、ダンナはいつもの調子で夜遅く帰ってきました。
「あなた、今日、ケイタイを忘れて行ったでしょ。危機一髪の小屋にあったわよ」
 奥さんはなぜか柔らかく話し出しました。
「危機一髪、お前、オレのケイタイを隠したのか? 仕事の邪魔をするな!」
 ダンナはこんなことをいきなり言い出し、話題を僕の方に振ってきました。これを聞いて僕はもう悲しくなってきました。折角、男の友情で、ダンナを救ってやろうと精一杯隠してやったのに。僕は「アホん、アホん」と、めっちゃ吠えてやりました。

 しかし、奥さんは真剣に怒り始めます。
「あなた、この愛って言う子、何? ハートマークなんか一杯メールして……今すぐに電話して、縁切りして頂戴!」
 奥さんの怒りはもう止まりません。
「それが出来ないのなら、明日、離婚しましょ!」
 こんなことまで息巻き出しました。
 さらにですよ、奥さんは僕の方を見て、それはそれはの八つ当たりで言い放ってくるのです。
「危機一髪もなによ、ケイタイ隠して。証拠隠匿の罪よ! 明日から御飯はお預けにします!」
 男の友情はダンナに裏切られました。そして奥さんからは、有罪と宣告されてしまいました。その挙げ句に、罰は……御飯抜き。これぞこの身にとって、餓死の危機。真剣に、これはまずいと思いました。
 世間では、「夫婦喧嘩は、犬も食わぬ」と言われていますが、もうそんな悠長なことを言ってる場合じゃありません。ここはなんとかして解決し、この危機を乗り越えないと。