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厨二物語・天馬崎筑子の昏睡兵器

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送られてきた内容を見て、私はちょっと顔を顰める。
天馬崎筑子…。この名前には見覚えがある。
たしか私と蔓と同じ学校の人で、女性の割りに背が高い美人で、何処となく大人な雰囲気があり、それでいてかわいらしい所もある、そんな人だったはずだ。
私は直接話した事は無いが、いつも周りに人が居たのを良く覚えている。
あの人がそんな事をしていたとは意外だった。
非合法って言うのは、ただ単に資格を持っていないというだけだろう。
さすがに高校生で心理療法士?だかなんだかの資格を持っていたら驚きだ。
それでも、腕がいいと評判…って事は闇医者みたいなものなのだろうか…。
蔓は私と違って学校では結構な事情通で、私の知らない所で色んな情報を仕入れてきてたりする。
情報の正確さは8割と言った所で、ある程度の誇張はあれど、根本で間違っていた事はあまりない。
友人補正もプラスして考えると、蔓の言う事は信頼するに値する。
それでも…現実問題、こんな私を助けてくれる人なんて…いるんだろうか…。
ましてや私と同じ高校生に過ぎない、天馬崎さんが、私を…
かといって警察には、いけない。怖い。
やめるには一番手っ取り早いかもしれないけれど…。
まだ、日常に居たいと願う私がいる。
愚かしいほどに。遅すぎた幸せの自覚。
考えれば考えるほど私は気分が悪くなる。手が震える。
…違う、考えたからじゃない、時間がたって薬が切れてしまったからだ。
自覚すればするほど、禁断の果実に依存しきった身体は実を求める。
先ほどまでの葛藤もどこかに消えて、今はただ、薬を飲むか我慢するかの二つ。
やがて思考が完全に停止して、ただ一つの禁忌を求めて、机に散乱したモノに手が伸びる。
やだ…飲みたくない…また、日常が黒に塗りつぶされる…。

――だめ、だ…。

無限に続くかと思った苦しみが、我慢の放棄と共に掻き消える。
――このままじゃいけない。
絶対に、このままでいいはずが無い。
携帯を持ったままの手が汗ばみ、喉が鳴った。
番号を、何度も確認した後に正確に入力していく。
携帯を耳に押し当て、荒くなる息を無理矢理に抑えるようにして反応を待った。
……プルルルル
と、嫌な間と共にコール音が耳元に響く。
「はい。もしもし。どちらさまでしょう?」
少しの無言の後、淀みの無い声が応答する。
「あの…私――」
「ああ。カウンセリングですか。」
言いかけた途中で、通話の主が言葉を遮った。
「…はい。」
駆け抜けるように会話が進む。
「お名前…言いたくないのならペンネームや芸名、ハンドルネームでもいいですが。と、時刻指定。場所は2丁目の並木通りのオープンカフェに指定させてもらいますけど。」
言葉は強いのに、不思議と威圧感の無い声色で、女性は必要事項だけを告げた。
「名前はちょっと…でも、時間はいつでも、出来る限り早く。本当は今すぐにでも…。」
私は促されるままに…約束してしまった。
「そうですか。なら、指定された場所に一人でこれますね?」
子供を諭すようで、それでいて嫌味の無い声を最後に私の声の返事待ちとなる。
「はい。」
私が短く答えると、程なくして声が返って来る。
「それでは…と、ああ。私の事は…受付で常連の女の席を聞けば分かります。今度こそ、それでは。」
事務的なようでどこか温もりのある声を最後に、通話が切れた。
「…はい。」
ツー…ツー…ツー…と言う通話終了の音が鳴る中、私は呟くように、自分に言い聞かせるように、肯定の言葉を口にした。