厨二物語・天馬崎筑子の昏睡兵器
――後日談――
翌日学校に顔を出すと、真っ先に蔓が私に飛びついてきた。
「ひっさしぶりじゃーん!!どうだった!?」
いつも通りの蔓の反応に、私は一瞬面食らってしまう。
「ん、ごめんね。心配かけて。」
頭を撫でながら、蔓を引き離す。
「あったぼうよー。だってあたし、あんたの親友じゃんよー!」
引き離しても引き離しても蔓は私に抱きついて、まるで確かめるように背中やお腹に手を回す。
「あっはっは…。本当に、ありがとう…。」
本気で心配していてくれたことが嬉しく、私の心に沁み込む様だった。
しばらくされるがままにされていると、蔓が心配そうに私の顔を覗き込みながら、
「…本当にどうした?マジで大丈夫?」
と、蔓の大きくクリッとした瞳が揺れた。
「後で、話すね…。」
私はそれだけ言って、天馬崎さんの方に視線を向けた。
――そこには、今までどおりの光景が広がっている。
男女問わず、稀に教師すら混じって話し込む集団。
その中心には常に天馬崎さんが座っていて…
「――…でさ、アイツが――」
他愛無い会話が続く。
それはいつもの日常風景。
しかし、考えてみれば見るほど、異常な光景だった…。
ふと、天馬崎さんが私に気付いたようで、クスッと微笑んだ。
そんな気がした。
私の日常は、最初から歪んでいたのかもしれない。
にもかかわらず、私は目に見える非日常を求めてしまった。
だからこそ、罰が当たったのかもしれない。
それを引き戻すのは、やはり非日常だった…
それだけの、事だったのかもしれない。
作品名:厨二物語・天馬崎筑子の昏睡兵器 作家名:門間円