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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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秋の碧い空

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初恋


「東君この答合っている」
声をかけて来たのは京舞子であった。英語で90店以上のなかに入っていた。
京一は答えを見ると違っていた。
「間違いです」
「そうか。数学苦手なんだ」
京一は答えを書こうとした。
「もう一度やってみる」
授業の終わった放課後である。教室には5,6人の生徒しか残っていなかった。窓から秋の西日が差しこんでいた。京の体半分にその西日は当たっていた。ワイシャツがかすかに太陽の色に染まっているように感じられた。
「こんどはどうかな」
自信のない声である。
「ごめん、違っている」
「何で東君が謝るの。おもしろい」
「だってさ、悪く思われそうだから」
「何で、答え間違っているのだもの・・」
「でも、本当は合っているって言って、喜ぶ顔が見たい」
「東君、バトミントンやらない」
「やったことないよ」
「教えてあげるよ」
「テスト中は体育館使用禁止だよ」
「だからいいのよ」
京は東の手を握って椅子から立たせようとした。
京一は彼女の手の温かさや柔らかさを感じた。自分の気持ちが京舞子の体のなかに吸い込まれて行くようであった。
顔の熱りを感じた。東はクラスメートにそのことを感じられまいと席を立った。
松葉つえをあわてて手にした。
舞子は体育教官室に入った。
「30分だけ体育館貸して下さい」
「使用禁止だぞ」
「だからお願いに来たのです。東君にバトミントン教えるのです」
舞子はバトミントンの選手であった。
「今日でなくてもいいだろう」
「今日でなくては駄目なんです」
「そうか好きにしろ」
「ありがとうございます」
「時間は守れ」
「はい」
舞子は体育館に入ると、ポールを床に立て、ネットを張った。いつもやっていることなのだろう手早く済ませた。
「始めましょう」
京一は松葉つえを壁際に立てかけた。
ネットを越えて白い羽が高く飛んで来た。京一はタイミングをはかってラケットを思いきり振った。羽はラケットのふちにあたりネットを超える事は出来なかった。
京一はこんぎをしながら羽を拾いに行った。ラケットを床に着き、左手で羽を拾った。
「サーブ打ってみて」
京一は羽を上げた。ラケットで羽を打ったが体のバランスが崩れ、羽はネットを越えたがコートから逸れていた。
舞子はすばやくその羽根を打ち返してくれた。京一の場所から2メートルほど離れていたが、きちんとコートのなかに入っていた。京一はその羽根を打ち返す事は出来なかった。自由に活発に動くことのできる舞子を羨ましく感じた。そして、京一は劣等感を感じた。
何回か練習をしているうちに、3回ほどラリーが続いた。
「上手くなった。楽しいでしょう」
京一はバトミントンは楽しくなかった。舞子と居る事が楽しかった。
「ありがとう。とても楽しかった」
「このハンカチ使って」
舞子は京一の汗を見て、ハンカチを渡した。
「いいよ、手で拭うから」
遠慮すると、舞子は額の汗をそのハンカチで拭いてくれた。
中学1年生であった。
2年生3年生と舞子とクラスが一緒になることはなかった。
高校も別の学校になったから、舞子に会う事もなかった。京一は高校を卒業すると、公務員の特別枠の試験を受けた。その枠は身体障害者枠である。合格できなければ大学に進学するつもりであった。3倍の倍率は一般の公務員試験に比べると低いものであった。京一は合格した。
作品名:秋の碧い空 作家名:吉葉ひろし