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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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秋の碧い空

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東 京一(あずまきよういち)は40歳までには結婚相手を見つけようと考えていたが、すでにその年を2歳も越えてしまっていた。
仕事は市役所に勤務しているので、収入は安定している。両親も健在で一緒に暮らしているし、父親の年金もあるので、京一の生活費はそれほどかからなかった。
貯金は3000万円ほどになっていた。結婚相手が見つかれば、マイホームを建てるつもりでいる。
京一は生まれた時から足の長さが違っていた。右足が極端に短かった。左足の膝ほどしかないのだ。歩けるようになったのは左足に力のついた、4歳の頃であった。歩けると言っても左足で跳ねるか、松葉づえを使ってのことである。
幼稚園に行くために歩く練習をしたのである。京一は幼稚園に行くことが楽しみであった。そのために一生懸命に練習をした。
最初は先生も友達も優しかった。でも少しづつ、その優しさが先生からも友達からも消えて行くように京一は感じ始めていた。
滑り台も、ぶらんこもみんなの様に上手くは出来なかった。ましてジャングルジムは見るのも嫌になった。砂場で、おしりをぺたんと付けて、一人遊ぶようになっていた。
お遊戯会や運動会も嫌いになった。
小学校になっても同じであった。体育の時間は見学が多くなっていた。体育で出来る事は鉄棒で有った。懸垂はクラスで一番になった。その時初めて誇らしい気持ちを味わった。
何でも一番になればみんなが見なおしてくれると、京一は感じた。
中学に進学してからは、勉強が好きになっていた。何かで1番になれるとしたら、京一は勉強だと思っていた。
テストが有ると、点数が良いものは名前を呼ばれた。それは教科の先生にもよったが、数学と英語で京一は名前を呼ばれた。数学は満点。ただ一人である。英語は90店以上の点を採った生徒の名前が呼ばれた。3名いた。
教室に響く自分の名前に唯一誇らしい気持ちになれた。懸垂の時の気持ちと同じであった。
いつも感じている劣等感から、解放される時でもあった。
作品名:秋の碧い空 作家名:吉葉ひろし