ZOIDS 外伝 惑星間戦争 1話
「あのね、200年前ならまだしも、今はZAC2200年を過ぎたのよ。地球人と星人のハーフなんてたくさんいるし、私もその一人よ。」
「ああ、まあ、なんだ。地球人であるし、尚且つ、その地球の一国家の家系ってわけだ。貴女が知ってる地球の言語は、何がある」
「え・・・えーと、英語?」
エレシーヌ女史はそう答えた。それしか知らないのだ。
カミカゼは本に書かれた言語を答えた。
「この日記にあるのは日本語だ。日本、という国家のな。尚且つ、俺の名前、カミカゼ… 神風ツルギとはこう書く。」
神風ツルギ大尉は、この星の言語ではなく、日本語でメモ帳に自分の名前を書いた。
「ほー…、いや、さっぱりわからんわ。あー、でも、なんとなくその日記に書かれている字体と似ているかも」
「まあ、そうだろうな。しかしなぜ、あのポッドの人間が俺と同じ日本人であるのかは、偶然か、必然かってところだが。」
「とりあえず、内容はなんなのよ。教えなさいよ」
また迫るように聞くエレシーヌ女史だが、ツルギは答えなかった。
「ここから先は軍事機密物だ。調査書はまだ書き終えてないが、お前たちとお別れしてから書いて届けるとするさ。」
「ちっ、まあ軍事機密物なんて言われたら、契約上は私らは知る権利はないからね」
エレシーヌ女史はそう言って諦めた。
研究所の医務室で、死んだように眠る少女が横たわる。
酸素カプセルに入った状態であるため、触ったりすることはできない。だが、内部の様子は丸見えなため、セルナはずっと、その少女を見守っていた。
「この子は… 死んではいない。生きている。けれど、起きる様子もない。」
少女につけられた生命維持装置は作動し、少女の心拍に問題はない。
だが、こん睡状態であるのは確かだ。まだ、暫く動きそうにない。
ドクターはその部屋にはいない。今は、セルナと、その少女のみだ。
セルナは、カプセルに近づいて、囁くように言った。
「君は、どこから…」
そんなことをセルナは呟く。その時、惑星各地で、異変が起き始めていた。
東方大陸の荒野で、二つのゾイドバトルが行われようとしていた。
一方は、アイアンコングとレッドホーン2機で編制されたチーム。もう一方は、ブレードライガーと、コマンドウルフAC、シャドーフォックス。
「準備はいいか?マスクマン、マービス。」
「了解だ。リーダー」
「こちらもだ。」
「よし、後はジャッジマンがくるのを待つのみだな。いいか?敵は装甲の硬い大型機が中心だ。マービスのフォックスでやつらを攪乱、マスクマンは俺の後ろにつけ。マスクマンのウルフが敵を足止めしてくれれば、俺もやつらを1機ずつ切り裂ける」
「了解だ。」
「了解」
チームリーダーのブレードライガー機が、通信でそう指示を伝えると、通信は切れた。
マスクマンと呼ばれる、まだ二〇年代前半といった男は、洒落でつけているマスクを取り外して、額を拭った。
なにせ、彼にとって初のゾイドバトルであるからだ。初めての相手がアイアンコングを含む大型機クラス。リーダーにはブレードライガー、親友であるマービスはシャドーフォックスと、僚機の方に不安はないが、自分自身に不安がある。
「マスクマン、深呼吸しろ。初のゾイドバトルなんだ。楽しんでいけよ」
親友のマービスが、通信に入ってくる。恐らく、キャノピー越しに自分が見えたのだろう。
「ああ、大丈夫だ。しかし、ジャッジマンは遅いな」
ゾイドバトル連盟のジャッジサテライトから、ジャッジカプセルが落下し、この地点でジャジマンが現れ、ゾイドバトルが始まるというルールだが、やけにその気配がない。
「なんだ?ジャッジマンは不調か?」
そうリーダーは思うと、ブレードライガーの顎を傾げて、相手側にジェスチャーを送る。
相手側のアイアンコングも、わからないと言った調子のジェスチャーを送り返す。
「ん?いや、まて、きたか?」
空の向こうから、光が見える。恐らくジャッジカプセルだろう。
マスクマンは、とうとう初のゾイドバトルに参加することになると思い、心躍る気分も、不安もある。
「…まて、あれはおかしい。ジャッジカプセルではない!!」
リーダーが叫ぶ。
相手側チームも、熟練者ぞろいの為か、コングとレッドホーンが、重火器を落下してくるカプセルに向けた。
「なっ、一体なんだと・・・!」
そのカプセルは、分離し、いくつかの機体がカプセルから躍り出て、落下してきた。
「なっ、なんだ・・・!?ああ!?」
マービスは、落下してくるいくつかの機体の更に向こうの空、いや、惑星の軌道上に存在するジャッジサテライトが、爆発炎上する姿が見えた。
「くるぞ!撃て!」
音量スピーカーを最大にして、相手側チームが叫ぶ。
踊りでた数機の、緑色の人型ロボは、自由落下しながら、こちらに手持ちマシンガンを撃ってくる。
確認できるのは三機。
マシンガンに撃たれたレッドホーンが一機炎上する。
「おいおい、冗談じゃねえ!リーダー!これはどうしたらいいんだ!」
「各機散開しつつ、落下してくる敵を撃て!相手チームとも連携しろ!」
リーダーの指示で、マスクマンたちは散開する。
マスクマンはただ、散開して動くことだけに精一杯で、射撃を行う余裕はなかった。
四機の機体が着陸すると、二機の機体が相手チームのアイアンコングに襲い掛かる。
アイアンコングは、接近してきた二機にその剛腕を振り回し、牽制するが、人型ロボは、対地ミサイルなどを発射して確実にアイアンコングにダメージを与えた。
レッドホーンがその隙をついて、二機に重火器を浴びせようとする。人型ロボが、一機それをまともに受けて、爆散する。だが、その爆風の中からもう一機のロボが現れ、突撃ナイフを手に持ち、レッドホーンの頭部を突き刺す。
確実に、レッドホーンのパイロットは絶命している。
一方、コングと戦うもう一機のロボも、マシンガンでコングをけん制しつつ、ミサイルを一斉射撃する。コングも負けじと、背部パックの大型ミサイルを撃つ。一斉射撃されたミサイルはコングに直撃し、コングは、倒れた。だが、大型ミサイルも、爆風により、一機を戦闘不能に追い詰めた。
一方、もう一機のロボと、ホーンを屠ったもう一機が、こちらに迫りくる。
マービスはスモークディスチャージャーを駆使して、敵を巻きながらレーザーバルカンで牽制する。だが、敵は急に速度を上げた。先ほどまで走行しながらの移動を、ホバー移動し始めたのだ。
ブレードライガーは、レーザーブレードを展開してもう一機に迫るが、避けられる。
「くそっ!マスクマン!ウルフのキャノンでやつを抑えてくれ!あいつを足止めさえできればいい!」
「りょ、了解!」
マスクマンにとって初のゾイドバトルのはずが、戦場のようなこの状況に、マスクマンは震えながら操縦桿を握るしかなかった。キャノンを敵ロボに向ける。
だが、敵はホバー移動を始め、照準がうまくとれない。
「なにやってる!はやくしろ!」
リーダーからの声で、もう撃つしかないと決めたマスクマンは、トリガーを引く。
だが、照準を定めてないキャノンは、ロボを掠め、最悪なことに、ブレードライガーに爆風をあてる結果になった。
「しまっ・・・」
マスクマンがそう言った時にはもう遅かった。
作品名:ZOIDS 外伝 惑星間戦争 1話 作家名:カクト