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エイユウの話 ~夏~

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 ラジィが戻ってきてから、四人は次の授業のために移動をする。
 夏らしく青々とした空と、燦然と輝く太陽がまぶしい。風もなく、だからといって暑いわけではない。花を枯らした草たちが、今度は揚々と葉を伸ばしている。誰も手入れをしていないのか、それらはぼうぼうに伸びて中庭を埋めているのが見えた。もちろんそれは足首を埋める程度だが。朝露がいまだに残っているのか、日の光に反応してきらめく。
 のんびり歩く他に合わせようとしないキサカに、ラジィが追いついた。引き留めるでもなく、こそっと怒る。
「なんでさっき来なかったのよ!」
「面倒臭かったから。流の導師が嫌いだから。俺には関係ないから」
 ラジィのほうを見もせずに答える回答はいかにも口から出任せで、説得させる気の無さが解りやすい。挙句「まだ言う必要が?」と言わんばかりの顔で、彼女の方を見てきた。どうにも考えの合わないことに、ラジィは自分の考えが相手に伝わっている分だけやきもきする。長くも短くもない髪を乱暴に振ると、ラジィはキサカを睨みつけた。
「邪魔者」
「世話焼きババア」
 一瞥もせず、前を向いたままキサカが言い返してきた。何とも言えない怒りがじわじわと込み上げてきたが、ここで怒鳴ったら負けだとラジィは感じる。何とか怒りをこらえて、しかし出てきた言葉は攻撃的だった。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷