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エイユウの話 ~夏~

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「ラジィ、どうしたの?」
「う〜ん・・・、流の導師様からいただいたペンダント、プールに落としたのかも」
 流の導師からもらったペンダントというのは、研修旅行時に誕生日を迎えた彼女が冗談半分で頼んだところ、何故か彼の機嫌がよく買ってくれたのだと聞いた。もちろん「彼の機嫌がよく」というのはキース的注釈だ。彼女が言うわけもない。
 もう一度探しに行くという旨を伝えた彼女は、必死に問題を解いているキサカから、キースのガルガを引き抜いた。なんとも表記し辛い、残念にも怒りにも取れる奇声を彼は上げる。そんな彼の言葉を無視して、ガルガをキースに突き出した。粗雑に扱われたガルガは、それを危機と感じたのか、既存の防衛機能で勝手に電源を落とす。
「キサカ、探しに行くのを手伝ってちょうだい」
 彼はガルガを持っていた手で、すぐにそれを取り返した。そのまま乱暴にキースに渡す。とても借りた物を返す所作ではない。
「何で俺が行かなきゃなんねぇんだよ」
 尋ねてはいるものの、その予想は完璧についている。結局彼女はキースとアウリーを二人きりにしたいのだ。しかし、そんな人工的で意図的な手段に任せるのは、キサカは嫌だった。しかもキースの思い人を知っているだけに、非協力さもひとしおである。
 そんなことも知らないラジィは、彼の不機嫌さがガルガを取られたことで発生したと思ったようだ。大人気ないとわめく彼女に、耳を塞いだキサカが先程のガルガの敵討ちのように、粗雑な返答する。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷