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エイユウの話 ~夏~

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「お、おい、どうした?」
「ちょっ・・・何してんのよ、あんた!」
「大丈夫?アウリー」
 妙に慌てたキサカと、彼をひっぱたくラジィに、とても心配そうなキースの顔が目に入った。どうしていきなりそうなったのかと、アウリーは疑問に思う。その疑問を、キサカを叩いていたラジィが乱暴に教えてくれた。
「あんたが考えずに聞いたりするから、アウリーが泣いちゃったのよ!」
 彼女の言葉にアウリーは自分の頬に触れる。彼には申し訳ないが、全くの無自覚だった。止まることなくぼろぼろと溢れだす涙を、隣に移動してきたラジィがハンカチでぬぐってくれる。それは、今朝自分が彼女に貸したものと同じものだ。
「借りたやつでごめんね?あたし、ハンカチ忘れちゃって」
 明るく笑う彼女に、奥でキサカがひいた。
「うわっ、不潔」
「泣かせた元凶が何言ってんのよ!」
 いつもはそう簡単に終わらない喧嘩だが、今回は分が圧倒的に悪いため、彼もさっさと口を閉ざした。彼の罪悪感を感じ取ったアウリーは、慌ててフォローした。
「いえ、キサカくんのせいではなくて、その、私も解らないと言うか・・・」
 彼女のフォローはフォローにならず、失敗したそれはかばわせたと言う事実になって、キサカの罪悪感をより強くさせた。それに気付いた雲だけが、彼にどんよりと影をかける。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷