エイユウの話 ~夏~
「そういえば、あんたは授業じゃなかったの?」
さっきの仕返しをするかのように、ラジィはキサカが今触れて欲しくない話題の最上位について尋ねた。不機嫌なまま黙り込んだキサカを見て、事情を知るアウリーとキースは可笑しくなる。状況がわからず一人ぽつんと取り残されたラジィは、件の話題をキサカに問い詰め続けていた。
何度も尋ねてくるラジィから逃げようと、キサカは話題をアウリーに振る。
「で、導師からの話ってのは何だったんだ?」
アウリーは答えようと口を開くが、うまく言葉が出てこなかった。
彼らに関係することなので、言ったほうがいいのは解るのだが、いかんせんふさわしい言葉が見つからない。相手を傷つけず、不安にもさせないで、今わかる断片的な占術(せんじゅつ)結果を話すのは困難だ。その結末が、終焉のレクイエムなのか、創始のファンファーレなのか、はたまた只のプレリュードなのか、その区別すらついていない状態では、どう言い回しても不安をあおるだけであると感じてしまう。
黙っているうちに入道雲が勢力を広げ、頑張っていた太陽に雲がかかり始める。光が見えたり消えたりするさまは、今のアウリーの気持ちそのものだ。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷