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エイユウの話 ~夏~

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「女が男の頭上に立つな」
「別にいいじゃない」
 ふんっと、ラジィは反り返った。風でスカートがはためいている。おかげで、キサカの位置から彼女のスカートの中が丸見えだ。キサカは目を閉じて大きく息をはくと、腹筋の力でひょいと上体を起こす。
「ズボンなら俺も言わねぇよ」
「ガードル穿いてるから問題ないでしょ」
 キサカの知る女性の視点と言うのがいつの時代のものなのか解らないが、彼女の節度がないだけであることを祈った。スカートの中を見られても、ガードルを穿いていればいいという発想は、どうかと彼は思う。
 そのまま移動してアウリーの隣に座った彼女に、キースが労いの言葉をかけてから確認する。
「今日は終わったの?」
 彼女の肯定の言葉を聴いて、その内容を思わずキサカは尋ねた。すると彼女は自慢げに言う。
「今回は例の、保険医との恋愛疑惑について話し合ったのよ」
 彼女は尻餅をついたのかと勘違いするほど、勢いよく腰を下ろした。平然と喋っているさまから、痛くないようだ。草のクッションは思いのほか弾力がある。とはいえ、自分が泣き出した話題を、どうやって冷静に話し合えたのだろうか。ラジィクラスのファンは、ファンクラブ内には何十人もいる。三人はその会議が混乱にいたったことを察した。
 冷静な三人の態度に気付くことなく、ラジィは不思議がる表情でキサカを見る。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷