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エイユウの話 ~夏~

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「あの、キサカ君とラジィさんは・・・?」
「ラジィはクラブ活動、キサカは授業だってさ」
 ラジィのはおそらく嘘だろう。キースの話によれば、キサカはかなり渋々だったと言う。ラジィの行動に反対する彼は、彼女の意向に沿わなければならないことが気に食わなかったのだろうと彼女は思った。間違っても人の恋路を邪魔して楽しむような、下種な人間ではない。
 さらに、彼女はキースの発言が気になっていた。自分は「キサカ」と「ラジィ」と聞いたのだが、彼から返ってきたのは「ラジィ」で「キサカ」だった。ほぼ同一にいるのだろうが、どうしても彼の優先順位は、ラジィが一番で、次がキサカと、あわよくば自分なのだろうと、アウリーは切なくなった。
 彼女のマイナスへの表情の変化に気付いたキースは、二人がいないことに気を落としたのだと思い、どうしようもない弁解を入れ始めた。
「いや、ラジィも渋々だったんだよ?でも、やむを得ず・・・って、何で笑ってるの?」
 あまりにも必死に的外れな解説をするキースの姿に、アウリーは笑い出してしまったのだ。笑いの止まらない彼女に、ついキースも笑い出す。二人はそのまま、しばらく笑い続けていた。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷