エイユウの話 ~夏~
「いや、たしか本名は・・・そうだ!サンゼノン=ロウ・シーランセイルだよ!」
一般的にセカンドネームの使用は不要だ。そのため、学校での自己紹介でもファーストネームしか言わないものが多い。導師同士が苗字や称号で呼ぶことも多いので、ファーストネームと姓のみが知られるところとなりやすいのだ。だから今回のような事態が起こる。逆にそれを知っているだけで何らかの関係があるとわかる。
その説明を受けても、キサカはわからなかった。
「セカンドネーム?恋愛関係で呼ぶなら、愛称だろ?」
確かにそれが普通だ。しかし今回は話が違う。訂正を入れたのはアウリーだった。
「それじゃ駄目ですよ!サンズという愛称ではばれてしまいます」
「ばれてんだろ。ってか、隠す必要も無いだろ」
確かに導師が準導師や校法医、時には準法師と恋愛関係になることに制約は無い。人によっては堂々と付き合っている人もいるくらいなのだ。そのためキサカの言うとおり、教育の現場だからといって、隠す必要は微塵も無い。準法師について注釈すると、つまりは卒業資格を得た術師のことをいう。もちろん、術師との恋愛はご法度だが。
しかし今回の問題は、保険医の恋人が流の導師であるというところにある。
「ファン倶楽部には、校内の約半数の女子が加入してるんだよ?」
もしばれたら、ファン倶楽部全員を敵に回すことになる。保険医を敵視して、保健室へ行くことを拒む生徒が増える事態は、学園側も保険医たちも避けたい事態だろう。もちろん術師たちによって保険医が袋叩きにあうなんて言うのも、なおさら起こしたくない。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷