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エイユウの話 ~夏~

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 関心が薄くなったキサカが、あくび交じりに発言する。
「次の授業なんじゃねぇの?」
「確かに流の授業があったけど、それは実技で薬草なんて関係ないよ」
「じゃあ明日の分?」
「だったら放課後だろうな」
「有毒生物全集を失くしたとか?」
「それは買わないといけないんじゃないかと思いますけど・・・」
 片っ端から推察されるものを上げていくものの、全くふさわしい案が浮かばない。授業が始まっているにも関わらず、というのが重いネックになっていた。普段の流の導師は授業中はおろか、終了してからも質問を受けるために残るほどの人物だ。そんな人が、クラスに一時的な自習を設けてまでここに来る理由がわからない。そんな中、アウリーがこぼすように言った。
「あの噂、やっぱり本当なのかな・・・」
「噂?」と、二人が声を合わせた。人付き合いの浅い二人にとっては、縁遠いものだ。人付き合いがあったとしても、二人とも気にとめないだろう。
「流の導師様と保険医さんがお付き合いをしているって・・・聞いたことありませんか?」
 聞くも何も、男の噂に先生の恋愛話なんてめったに上がらない。もともと男子の興味は自分の恋愛で、女子は他人の恋愛を気にするので、誰と誰がどうなったなんて、聞いたって噂にはならない。ましては女子から絶大な人気を受ける先生の噂なんて、どんな悪い噂だって耳にも入れたくないと思うところだ。もとより、男と女では噂の流通度自体が異なる。
 苦手なもののコラボに、キサカは顔をしかめた。キースはポンと手を叩く。
「でも言われてみれば、ラジィが倒れたときも、保険医はロウって呼んでた」
 それを聞いて、今度はキサカとアウリーが首をかしげた。
「ロウ?それがどう流の導師と関係してるんだ?」
「流の導師の名前は、サンゼノン・シーランセイルですよね?」
 二人の言葉に、キースは答えを思い出していく。死ぬほど想い人に聞かされた名前。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷