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初音ミクは悲劇のヒロインになる

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・音楽という文化は衰退している



 2012年現在のポピュラー音楽、またはJ-POPと聞いて、思い浮かべるのはどんなことだろうか。
 CDの売り上げ激減、違法ダウンロード問題、アーティストとしての技術低下など、あまり良いものは浮かばないのは私だけではないだろう。
 今挙げたような例が起こった理由には、もちろん様々な原因があり、その原因に我々聴く側の人間も携わっていることは、また周知の事実だろう。
 その中で私が特に問題視しているのは、「アーティストを含む、音楽全体の技術低下」である。
 
 今この世に出回っている音楽は、CDにしろダウンロードしたデータにしろ、プレーヤーがあればどこでも臨場感のある高音質で、さらに同じクオリティのサウンドを何度でも聴くことが出来る。
 これは音楽の歴史からすればあり得なかったことであり、正に歴史を覆す発明である。
 さらにシンセサイザーを初めとする電子音楽機器が産まれたことによって、楽器を演奏せずに音を作り出すことが出来たり、広い空間で演奏をせずとも、その場で音の広がりをシミュレート出来ることもまた、今までの歴史にはあり得なかったことである。
 近年では録音技術もさらに進歩し、スピーカーから流れる音楽を聴くのも、大ホールで大勢が演奏するオーケストラ曲を聴くのも、変わらない音質と迫力を得られる時代が来ているのだ。
 そのような技術の向上は、音楽に限らず、様々な分野にも起こっているのは確かであり、そこから新たな文化や芸術も産まれている。
 このような時代を作り上げた人々、そしてその最先端の技術に囲まれて生活出来る時代に産まれたことに、まずは感謝をするべきだ。
 話は逸れたが、そのような高い技術があるにも関わらず、私は「音楽という文化は衰退の道を辿っている」と感じてしまうのだ。
 そのような感想を持つ人は他にも沢山いるだろうし、技術が作られようとしていた時代にも、決して少なくはない。
 4:33という演奏者が楽器を弾かない曲を作ったことで有名なジョン・ケージは、自身の曲をレコードに録音することを快く思っていなかったそうだし、現在活躍する作曲家でも、エレトロニクス作品をあえて作っていなかったり、録音をして保存しない人も多いと聞く。
 今の時代に生きる人で、音楽を聴かない人は、国内ではほぼ皆無といって良いだろう。ありとあらゆる場所で音楽が流れるようになったのは何十年も前からのことだ。それがさらにオーディオプレイヤーの小型化や普及などによって「誰もが好きな音楽をいつでも聴ける時代」になった。
 しかし、それは言い換えれば、世界で一番聴かれている音楽というのは「スピーカーから流れる音楽」になってしまったとも言えるのだ。