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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第十三話

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「雷が鳴っていますね。明日の朝まで続くのでしょうか?」

「今降り始めたからそうかも知れないな。気をつけて出かけるんだぞ」

「はい、そうします」

雷雨の音に寝付けないまどかはもう一度藤次郎を求めた。今までそのようなことがなかっただけに藤次郎は何がまどかをそうさせるのか戸惑いながら二度目の終わりが来た。

まどかはしがみついてずっと離れようとはしなかった。
どれほど時間が経ったのだろう。外は明るくなってきたが、雨はまだ降り続いていた。そして時折地を揺らすほどの落雷音が響いていた。

「今日はえらい日になり申したな。身体が冷えぬよう十分に注意してお出かけなされませ」

迎えに来た次郎左の共の者がそう言った。

「はい、そうさせていただきます」

蓑をしっかりと被ってわらじに布を巻き破れないようにしてまどかは家を出た。振り返ると藤次郎と子供達がいつまでも手を振って見送ってくれていた。
何度も何度もまどかは振り返った。
懐に手を入れて、いつも肌身離さずに持っていたマリア像を忘れてきたことに気付いた。
涙が何故かこぼれてきた。これが最後の別れになってしまうような予感がしたからだ。

後ろ髪を引かれる思いでまどかは東海道を東へと進み始めた。
鳴海から道は桶狭間の横を過ぎて仙人塚に差し掛かった。境川を目の前にして三河に入ろうとしたその時、目の前に閃光が走り大きな音と共に落雷した。

「きゃっ!」

一瞬身体が宙に浮いたような感覚があり、そのあと地面に叩きつけられてまどかは失神した。
共の者は落雷で絶命した。

雨が激しくまどかの身体に注いでいた。失神する直前はそういう感覚があった・・・