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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第十三話

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自分を呼ぶ声で目を覚ました。
ゆっくりと目を開けると、自分を見つめているのは藤次郎でも、藤子でも、二人の息子でもなかった。

「まどか!ようやく気付いたのね。良かった。ずっと意識をなくしていたからとても心配したのよ」

それは聞き覚えのある声と顔だった。

「お母さん!・・・何故?」

「何言ってるの!あなたは仙人塚の前で倒れていたって通りがかった人から連絡があって、救急車で運び込まれたのよ。覚えてないの?」

「救急車で病院に運び込まれた・・・って本当なの?」

「そうよ、本当に心配かける子ね。夜中に一人でどこに行くつもりだったの?」

「仙人塚」

「仙人塚?何故?」

「呼び出されたの・・・」

「誰に?」

「誰って・・・」

まどかは自分がどうなっているのかまだ解らなかった。夢を見ていたのだろうか、いや違う。身体がはっきりと覚えている。
起き上がって自分の身体を見た。中学生のままだった。胸もおなかも足も家を出たときと同じだったし、顔もそのままだった。

「お母さん・・・私はどれぐらい寝ていたの?」

「一日よ。先生が不思議がって居られたの。こんな事は経験がないって。意識ははっきりとしているのに目が覚めないから催眠状態みたいだってそう言われた」

「催眠状態?」

「そうよ。でもそんな事もうお母さんはどうでもいいの。あなたが目を覚ましてくれてホッとしているからね。先生にお願いして大丈夫だったら家に帰りましょう」

「お母さん・・・私ね・・・」

「何?」

「ううん・・・いいの。心配かけてゴメンなさい」

「謝らなくていいのよ。私の大切な子だもの・・・元気になってくれただけで嬉しいから」

まどかは泣き出してしまった。
母親の優しさにではない。
もう二度と藤次郎と子供達に逢えないことにだった。

夢であったのに違いない・・・そう思いたかったが、身体が記憶を鮮明に残していた。


「まどか、あなたを見つけて救急車を呼んでくれた人にお礼を言わなくちゃいけないのよ。退院したらその方のところへ一緒に行きましょうね」

「うん・・・どんな人だったの?」

「若い男の人よ。バイト帰りだって言ってたわ」

「バイト?あんな時間に?」

「コンビニじゃないの。確か・・・そう言っていたような記憶があるわ」

「そう。解った」

「それとも、今お礼の電話掛けてみる?」

「仕事中じゃないの?」

「バイトしているって言ってたから、どうかな・・・大学生には見えなかったけど」

「後で掛けてみる」

「そうね、早いほうがいいわね。ちゃんと言いなさいね」

「解っているよ」

担当の医師から大丈夫ですよと退院の許可を貰ってまどかは母親と一緒に病院を出て自宅に帰った。
自分の部屋はあの時のままだった。散らかしていた雑誌やアクセサリーも記憶のままだった。