歓悪懲悪物語
掃討作戦：国防軍
「おい！聞いたか？」
全く俺をなんだと思っていやがる
「大田経済相が暗殺された事だろう？」
「なんだ，もう知っているのか」
「当たり前だ，あんな殺し方されてりゃどこのテレビも持ちきりだろ」
昨日，深夜２時頃に大田経済相の家を強襲され，護衛の国防軍から私兵まで全滅，本人は四肢が切り取られて死亡という惨殺だからな
「あぁ，そうそう今日の軍事訓練は中止らしい」
「えっ？どうしてだ？」
「国防軍の部隊練度を上げるためにスラム街の掃討を開始するらしい」
「そんな事いったい誰が？」
「政府のお偉いさんらしい・・全く高官の考える事はわからんな」
本当に何考えてんだよ，ただでさえ今の政策に反対してる奴が多いのにこれ以上反対派を多くして何がしたいんだよ
「意味わかんねぇな」
「本当に・・掃討作戦は３日後らしいからしっかり言っとけよ」
「へいへい」
「という訳で３日後にスラム街の掃討作戦があるから，しっかり準備しとけ」
「一之瀬上官，質問なんですけどなんでスラムを掃討しないといけないんですか？」
「・・・知らない」
高官の考えてる事なんか俺に分かるか
俺たちは自分たちのすべき事を果たせばいい
他の感情なんざ不要だ，戦場ではそれが命取りになる
「じゃあ質問変えます，ブラッディ・クリスマスって誰が起こしたんですか？」
こいつ，予習すらしなかったのか
ほんと，よく国防軍に入れたな
「ブラッディ・クリスマスを起こしたやつはＪって呼ばれる殺し屋だよ」
「殺し屋？！この時代にそんなのいたんですか！？」
まぁ，知らない奴が聞いたらそういう反応だろうな
Ｊは殺しもするけど実際はなんでもないただの何でも屋だ
「Ｊは普通の何でも屋だ」
「何でも屋？！人を殺すのが何でも屋？！あれ？殺し屋で何でも屋ってどういう事ー！？」
「何でも屋だから殺しもするんだよ，だから迷子になった猫の捜索などもやってるぞ」
「なおさらどういう事ー？！」
うん，そうだろうな
俺も初めて聞いた時は訳が分からなかった
興味本位で調べたらとんでもない奴って分かった
「・・・Ｊは裏じゃ『いかれた道化師』『人間解体士』『熔解ギロチン』・・・『断罪者』って呼ばれてるらしい」
「・・・・！」
「興味本位で調べるのも結構なことだがヤバい事には首を突っ込むなよ」
「・・・はい」
「作戦は３日後だ，それまで準備を万全にしとけ」
・・・もしも，スラム掃討作戦でＪが来たら俺たちは全員等しく死が訪れるな
あくまでもしもだが・・・
くそっ！掃討作戦の事を考えてたら，気分が暗くなっていけねぇ
食堂に行って腹ごしらえしてくるか
・・・・
え？俺，ちゃんと言ったよね？
ヤバイ事・・ていうかＪに関わるなって遠まわしに言ったよね？
馬鹿なのか？コイツ馬鹿なのか？あっ，馬鹿だったね
「坂木・・と上島何やっているんだ？」
「あっ，どーも一之瀬上官・・・坂木が調べ物したいっていうんで」
「どうしたんですか？一之瀬中尉」
いやいやいや，普通分かるだろ
ついさっき言ったばっかじゃん
「坂木・・なんの調べ物してるんだ？」
「えっ？もちろんＪの事ですけど」
「・・・俺言ったよな？ヤバイ事に首突っ込むなって」
「言いましたね」
分かってるのかよ！
じゃあ，なぜ調べんだよ！？
「今回の掃討作戦はＪが来たら負けなんですよね？だからＪの戦い方を調べておこうかなって」
こいつ，そこまで考えてたのか・・・
でも，ＰＣだけで分かる訳ないだろ
情報は自分の足で調べるもんだ
「坂木，情報は集まったのか？」
「いやー，出てくるのは何でも屋としてのＪで殺し屋としては出ませんねー・・・意外とＰＣって情報は集まらないんだなー」
「あー，一応言うが情報は自分の足で調べるもんだぞ」
「あっ！そうですね！その手がありました！」
？
その手ってどの手？
俺，そんなヒント与えたっけ？
・・・分からんな，あいつの考える事は
まぁ，なるようになるだろ
ん？
「何を笑っているんだ？上島」
「いや，あの子は私たちの予想の斜め上をかっとび続けますからね，子守り・・しなくていいんですか？」
「あー，はいはい行きますよ，行ったらいいんだろう」
ていうか，あいつもういないな
やっぱ足速いな，まぁ，国防軍はＧＰＳつけんのが絶対だからすぐ居場所は分かるんだがな
？！
おいおい・・・ここってＪの事務所じゃね？
・・・・・・ヤバイ！！