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有栖川さちほ
有栖川さちほ
novelistID. 40519
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ローラ×ローラ

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「採用されるには、面接と試験があるんだけど。……問題は面接よねぇ」
「うっ、面接は苦手なんだよね……」
 400万Nという金額に浮かれていた気持ちが、一気に現実に引き戻された。面接はろくな思い出がない。
「まあ、カムリはあんたの師匠……えっと、名前なんだっけ?」
「クリストファー=ガング。世界最強の剣士の名前を忘れるなんて。ユーン、それでも元冒険者だったの?」
「も、もちろん知ってるわよ。この女性冒険者カフェを経営してるのは、このアタシなんだからね」
 オレの軽口が少し気に障ったのだろう、ふくれっ面になった。いい加減で大雑把なユーンだが、世界情勢や各地の冒険者の情報には詳しいという一面もある。冒険者の斡旋業務のためオレも勉強しているつもりではあるのだが、本業の彼女には遠く及ばない。「クエストの仲買」という珍しい仕事をこなしているだけのことはあると思う。

「1年前、スニースの森のコボルトに攻められたとき、クリストファー=ガングのおかげでカムリはコボルト撃退できたようなものだし。最強の剣士ギルド『北極星の騎士団(ナイツオブポラリス)』には頭上がらないと思うよ」
 その話はオレも知っている。森林と港の国であるカムリ王国は、森に根城を構えるコボルトの侵攻に長年悩まされ続けていた。数年前からスニースの森のコボルトが勢力を増し、カムリ王国は連戦連敗。あわやコボルトが首都まで迫るというところまで、カムリは追い詰められた。そこにオレの師匠であるクリストファー=ガングが現れ、コボルトをたった数名で撃退したという話だ。こういう話は今に始まったことじゃない。あの人は生きる伝説なんだ。


「アタシがちょちょっと推薦状を書いてやれば、結構いけるんじゃない?……アンタが『大暴れ』しない限りはね」
「うっ、痛いところをつくね」
 
「ホントのことじゃない」
「そうなんだよねー。オレが大暴れしなけりゃいいんだけど。自分でも本当に抑えられないんだよね……」
 オレの最悪の欠点は女の子に見えることではない。「すぐにキレる」ことだ。
 オレを女扱いする、バカにする、ちょっかいを出す……そういう輩には本当に我慢ができない。見境なくキレて、それが男なら問答無用で斬りつける。そのせいでトラブル続発。出禁になった酒場は数知れず。ユーンたちに拾われていなければ、明日のご飯も食べることができない身になっていたかもしれない。
 この性格と外見のせいで、オレについた通り名が「ニトロチェリー」。この通り名も気に食わない。「ニトロ(危険な爆発物)」なところは認めざるを得ないけれど、「チェリー」ってなんだよ。「チェリー(可愛い処女)」なんて屈辱だ。この通り名がついたせいで、噂が噂を呼び、「美少女剣士」として全国に知られる始末。興味本位でオレに近づくものがあとを絶えない。


「そこはキレないようにがんばってもらうとして、試験は……大丈夫でしょ。なにせ若干14歳にして、北極星の騎士団の「達人(マイスター)」の称号を得たくらいだからね。証書あった?あればそれも持っていきなさいよ」
 世界最強の剣士が率いる、ポラリスは「騎士養成ギルド」だ。騎士の素質があるものを一人前の騎士として育て上げる、「北極星のように騎士の指針となれ」がモットーだ。卒業して「(騎士)ナイト」として認められれば、どこの宮廷でも引っ張りだことなる。その中でも「マイスター」と呼ばれる人物が数人いる。クリストファー=ガングの高弟として認められた証だ。オレは「武・勇」を認められた。あれから2年しか経っていない。

「……元ね。もうポラリスとは関係ないよ。絶縁状を叩きつけちゃったしね」
 オレが尊敬してやまなかった師匠、誇りにしていたマイスターの称号。それも全部怒りで捨ててしまった。オレの騎士道は間違っていない。それは今でもそう思うけれども、あれだけの恩を受けながら一時の怒りですべて捨ててしまった。今更、どの面下げて「マイスター」を名乗ればいいんだ。

「いいじゃん、使えるものは使っていかないと。まぁ、あとはアタシが色々『武勇伝』を書いとくよ」
 いたずらっぽくユーンが笑う。悪い予感しかしない。

「やっぱり、これは外せないかな。奴隷盗賊団をたった一人で壊滅させた……と。ついでに依頼主も斬っちゃった、と」
「やめーて〜!それはオレの黒歴史なんだから〜!!」
作品名:ローラ×ローラ 作家名:有栖川さちほ