ローラ×ローラ
「ベンヤミン、お前がいくら……」
「話がズレていますよ、お父様」
これ以上は限界と判断し、話に割り込んだ。
「ロ、ローラ〜!」
お父様の顔がぱあっと明るくなり、おじ様に対して「してやったり」の顔になった。まだ、何も言ってないのにどうしてそんな態度に変わるのか、お父様の考えていることは私にはなんだかよくわからない。
「おじ様。お話し中のところ、盗み聞きする形になり申し訳ありませんでした」
深く礼をする。
「いや、かまわんよ」
と穏やかな声で言ったものの、あからさまな敵意の眼差し。
私と話しているとき、おじ様は警戒心をぐっと上げる気がする。私はおじ様とも仲良くしたいのだけど。
「ドリンクの件でお話しがしたくて参りました。おじ様、毒薬か調味料か……まだよくはわかりませんがこれはゆゆしきこと。この件に関しては、徹底的に調査をしなければなりません」
「むろんだ。それなら、私がすでに調査するべくチームを組んでいる。それで何かわかれば発表するということで」
その話は終ったと言わんばかりに机の上の書類に目を通し始めた。
「ありがとうございます。ただ、この件に関してまして、私たちの問題であります。私たちも調査させていただきたいのですが」
「別に構わんが……どうやら私が仕組んだこと、と結論付けたい人物がいるようだ。初めから結論ありきでは、公平な調査とは言えますまい。二号派の調査結果は……そうだな、参考意見にはさせていただきますよ」
なんだと、と喰ってかかろうとするお父様を抑えて、私はこの件を切り上げることにした。お父様の発言のせいで、とてもうまくことを運べそうになかった。一応、調査許可が下りただけましだった。
失礼します、と退出しようとしたときに、おじ様が
「……女王気取りだな」
と、吐き捨てるように言った。
そのとき初めて、私が暗殺されそうになったんだと痛感した。