「許されぬ想い」 第二話
「伸ちゃん!今日は歩きなの?」
「あっ!誠人さん・・・そうなの、車検に出しているから車が使えなくて」
「ちょっと待ってて。ボクが送ってあげるから」
「そんな、いいです」
「遠慮しなくていいから、知らない仲じゃないし」
誠人はそういうとタバコをもみ消して、駐車場の方に走っていった。
「お待たせ!」
黒いベンツに乗って伸子の横に車を停めた。
「いいんですか・・・乗せてもらっても?」
「ああ、お願いしたいぐらいだよ。さあ、乗って」
「こんな高級車初めて乗ります。すごいんですね誠人さんは」
「それほどでもないよ。お兄さんの雄一さんは気の毒だったね。きっと政治家にはめられて責任取らされたんだよ。あの会社汚いからな」
「どうしてそんな事ご存知なんですか?」
「辞めたけど、取引先に勤めていたんだ。だから、顔だけだけどお兄さんの事は知ってるよ」
「それで、下山って言ったときに直ぐに解ったんですね」
「そういうことだね。ところで伸子さんはどうして離婚したの?」
「えっ・・・はい・・・亡くなったんです」
「そうか・・・残念だったね。癌か何か?」
「ええ、そうです」
「ふ~ん、偶然って恐ろしいね。ボクの妻も乳がんだったんだよ死んだのは」
「奥様ご病気で亡くなられたんですか!」
「ああ、なんか話していると他人事のように感じられないよ。伸子さんの事もっと知りたいなあ。こんど一緒に食事でもいかがですか?」
「こんな年寄りを捕まえて・・・冗談言わないで下さい」
「年寄り?ボク幾つに見えますか?50ですよ。変わらないんじゃないの?」
伸子はそう言われてびっくりした。嘘をつき続けてもうこれ以上は騙せないと思い始めていた。
作品名:「許されぬ想い」 第二話 作家名:てっしゅう