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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第十二話

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「よかろう。今は徳川家のお膝元。天海の頼みであればいかにでもなろう。これからの事は次郎左に何事も任せられよ。
わしも心強くなったわい。これでひろこと光慶が生きておれば・・・言うことがなかったものを」

「珠さまが居られるではありませんか?」

「そうじゃが・・・逢えぬから寂しいわい。それにキリスト教に深く信心している様子も気になる」

「ええ、珠さまはガラシャと仰るのでしたね?」

「よく知っておられる・・・」

「お美しい方で評判とお聞きしています」

まどかはそこまで話して・・・ハッと気付いた。細川ガラシャといえば悲劇の人だったということをだ。
光秀が生きていて、ひろこと光慶が死んだ今、一人残された娘、珠まで失うことになることはあまりにも可哀そうだと思えてきたのだ。


「桶狭間での暮らしの事は帰って藤次郎と相談してからお返事いたしとうございます。どちらにしましてもおなかの子供が生まれる前には決めたいと考えております」

「そうじゃったのう。二人目のお子が誕生することは目出度い。そちの歳では子を産むということは少ないであろうから、気がかりではある。無事出産できるように祈っておるぞ」

「ありがとうございます。私は大丈夫でございます。まだこの子の後にも欲しいぐらいですから」

「そのように元気なのは喜ばしいことだ。頭だけではなくそなたは身体も普通と違っておるような気がする」

「元気なだけが取り柄でございますから・・・」

「謙遜なさるな。引き止めて悪かった。良い返事を待っておるぞ。次郎左に送らせよう・・・次郎左!こちらへ参れ」

「次郎左かしこまってございます」

「うむ。まどかさまをお送りいたせ」

「承りましてございます。さあ、こちらへどうぞ」

夕方までに家に着いたまどかは藤次郎に桶狭間での暮らしをどう思うか尋ねた。