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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第十二話

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「山崎で農民兵に肩を刺されて傷を負ったが、次郎左に助けられて一命を取りとめ見つからぬように鳴海で潜んでおった。
ある方からの依頼で僧侶に身を変えお仕え申し上げておる」

「家康様ですね」

「まどかどの!何故それを知っておるのか?」

「恐れ入ります・・・」

「そなたは何事も知っておるのじゃな?どうしてそのような知恵があるのか本当のことを語ってはくれまいか」

「はい、天海様のお聞きになりたいことで知っていることがあればお答えいたします」

「そうか、では秀吉亡き後天下は誰が治めるのか?」

「お仕えになっておられる方です」

「やはりな。してその後は?」

「その後は・・・ございません」

「無いと?どういうことじゃ」

「少なくとも家康様の後には争いごとが起らないということでございます」

「何百年もか?」

「それに近い月日でございます」

天海は低く声を発し目を瞑った。

「世の中が安定して民百姓が苦しまなくて済むと言うのじゃな?」

「細かい事は知りませんが、国が二分するようなことはありません」

「それを聞いて安心した。命を救われた次郎左と供に家康様の傍に仕えてその時に備えるとしよう。まどかどのどうじゃ褒美に三河に来ぬか?
そなたの思うような屋敷を探して暮らせるようにさせてはくれまいか?」

「そのようなお心遣い勿体のうございます。まどかや藤次郎には相応しくない暮らしに思えます」

「そなたは頭が良いから学問を教えてくださらぬか?これからの武士は強いだけじゃ渡って行けぬような気がする。戦がなくなれば尚更そうなるであろう。
夫には今の仕事を続けるか次郎左の下でわしの手伝いを引き受けてくれると助かるのじゃが・・・いかがであろう?」

「三河・・・桶狭間でも宜しいでしょうか?」

「桶狭間とか?何故そこにこだわるのじゃ・・・そうか生まれ故郷だからか?」

「はい、それもありますが、私と藤次郎様が出逢った場所でもありましたから・・・思いつきました」