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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第十一話

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「まどか様!大変です。藤子様がお目覚めになりました!」

傍で見守っていてくれた産婆が大きな声を出してそう叫んだ。

「本当ですか!」

「はい、本当です。赤子に乳を差し上げておられます」

「なんと言うこと・・・マリア様感謝します・・・そして夢に立った武将どの、約束を守ってくれてありがとうございました。まどかは決してこのことを忘れることはありません」


藤子が乳をやっている傍でまどかと藤次郎は安心した目でお互いを見詰め合っていた。
この日藤次郎の求めに応じたまどかは遅いながら妊娠をして翌年男子を出産した。その後もう一人男子を出産して家系は耐えることなく続いていった。

明智の村に噂が立っていた。
死んだはずの光秀を見たと、村人が話していた。

「光秀様は山崎から逃げられる途中で亡くなられたと聞いて居るぞ。何かの間違いだろう」

「首(しるし)は秀吉様の元には届かなかったと聞くぞ。ひょっとして逃げ延びられたのではないのか」

そんな話がまことしやかに飛び交っていた。確かに光秀の首は人前にさらされる事は無かった。それは信長とて同じ事である。
秀吉の目が文禄の役で外に向いて国内の治安が安定しているこのときに逃げ隠れていた場所から生まれ育った明智村へ光秀は一時帰国をしていた。
もちろん風貌も変わり名前も変えていた。一応僧侶らしい格好をして名を「天海(てんかい)」と名乗っていた。

「天海僧正様仰せの義しかと承りました。それがしにお任せくだされ」

「うむ、頼んだぞ。くれぐれも内密に頼むぞ」

「はい、心得ましてございます」

頼んだのは天海、頼まれたのは土岐氏の流れを汲むかつての配下明智次郎佐衛門義時。道三(斉藤道三)侵略で追われて鳴海に住み着いた鳴海次郎佐衛門そのひとだった。
頼まれた用件はまどかを連れてくることだった。
夜半に寺を出た次郎佐はよく見知った路をまどかが住む村へと急いでいた。