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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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困った時のイエス様

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高嶺良子


彼女は50万円が希望額であった。身だしなみも化粧もきちんと整っていた。40前後の年にしては疲れた感じがした。顔立ちも良く疲れた表情さえなければ男に好かれるような感じの女性に見えた。
「サラ金めぐりして来たんですが,どこも枠を超えてしまうからと貸してくれないんです。どうしてもそれだけ必要なんです。助けてください」
誰が名付けたかは知らないが、富士画廊はイエス金融とも呼ばれていた。
大手サラ金から転職して来た峰蝶子がすべて手続きを行ってくれる。
住所、氏名、家族構成、勤務先、電話番号、年収などである。
希望額満額か下回るかは高が判断した。基本的には貸さない事はなかった。
高が金を貸す方法は絵を購入したことにしてローン会社から金を借りる方法なのである。
金利もサラ金の半分以下であり、審査も厳しくはないのである。
高は少しだけ手数料を取った。税金分である。
彼女の夫は地方公務員であった。高は満額貸すことを決めたが、金が必要な理由を尋ねてみた。
「正直に言います。パチンコです。1日に10万円儲かった事があったんです。パートで時給800円がばからしくなって、パチンコの損が重なって、
サラ金で借りて、それが100万円になり、毎月5万円の返済が出来なくなって、友達から借りて、もうどこからも借りられなくて、主人には言えないし・・」
「そうですか、それでしたら100万円貸しましょう。ローンの返済は月3万円ほどですから、仕事探したらいかがですか」
「解りました。仕事探します」
彼女の顔から疲れが取れた様に見えた。その顔には幸福そうな表情がうかがえた。
高はその顔を見るだけで良かった。
もし、どこからも借りられなければ、離婚、あるいは夜の仕事で働くことになるかもしれない。自分でつくった借金であるからそれも仕方ないのかもしれないが、高自信金の事では苦い経験があったのだ。

作品名:困った時のイエス様 作家名:吉葉ひろし