蒼天の下
ゲートが再開し、人が固まってできたエントランス広場の三角形が鋭角になってゆく。
「ねえ、ちょっと早いけど、先に何か食べてようか。入りそう?」
昼の混雑を避けようとしてなのか、ゲートを通過するとすぐに妻はそう告げた。ん? ん? とこちらを軽く振り向いただけで、妻と息子はとくに返事も確かめることなく、園内のレストランに早足で向かっている。トロンボーンの音がひときわ大きくなった。
「ああ、いいよ」
うしろから、声を出さずにそう合図した。もう決めていることなら、同意するにやぶさかではない。自分のひと言が、ひと言でさえが、運命を変える力をもっている。自分だけでない、この世のすべての人が、森羅万象が。
家族の背中を見ながら、自分は幸せなのかともういちど問うている。そして将来から見た『いまこのとき』は、全肯定の対象となりうるのだろうかと。
「あのさ、俺」
「なに……全然聞こえない」
なんとなく出た声にも妻はとりあわず、息子とふたりでレストランの大きな扉を引こうとしている。自分はそれに手を添えようと駆け寄った。
青く遠い十二宮の真下である。
了