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リンダリンダ

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リンダと出会ってから確かに仕事ぶりも顔付きも変わったのだろう。男の同僚にも同じようなことを言われたのだから。菜美の年齢は聞いてなかったが、オレが入社5年経った頃に入社している。たぶん5歳下くらいだろう。ということは30代後半? もっと若く見える気もしたが、化粧も服装も派手じゃないのでそれ相応なのだろう。

気のせいだけじゃなく、菜美が積極的に寄ってくるのをオレは感じていた。昼食も一緒に食べに行ったり、菜美が「ついでだから買ってきてあげるよ」というコンビニ弁当を一緒に食べることもあった。もう社内では皆気づいている筈だ。

   しのぶれど色にでにけりわが恋は ものや思ふとひとの問うまで

自分では気づいていなくても、どこかに出ているのだろうということを、リンダで知るとは思わなかった。借りたCDのお礼にと菜美を食事に誘った日、オレはいつになく冗談を言い、菜美を笑わせていた。笑顔はいい。普通の顔の菜美は地味な顔だったが、笑顔は輝いて見えた。そして何よりも目の輝きにオレはすっかり惚れてしまったのだ。

テレビドラマなどで俗にある、そのあとホテルへという展開にはならなかったが、オレはいい気分でアパートの自室に帰った。ビールも飲んでいたし、浮かれた気分でリンダのもとに行き、「ただいまぁ」と声をかけた。

リンダの顔と自分ではそう思っている花が動いた。あれっ、動いた? オレはもう一度「リンダ、ただいまあ」と声に出して言った。リンダの顔がすっと後ろ向きになった。
えええっ! もしかしてすねてるのか? 今までの経緯から現代科学ではまったくあり得ないこともあると思っていたオレは、それでも驚いた出来事だった。

「お酒の匂いかなぁ、それとも女の子の匂いがしたのかなあ」
まだお酒の余韻の残っているオレは、さらに語りかけをした。リンダが頷くように揺れた。
「お酒?」
リンダに動きはなかった。
「菜美っていうんだよ、彼女」
リンダの顔が揺れた。オレは可笑しさと愛おしさを感じて、リンダの肩を撫でた。
「きゅう〜〜」
気のせいか拗ねたような鳴き声に聞こえた。
「そうかあ、困ったなあ。両方好きなんだよなあ」
そう呟いて、さあどっちを取ると頭の中での思いを中断させた。さすがに自分の精神状態が心配になってきた。それども、コレは事実だと断定し、オレはリンダのもとを離れた。

作品名:リンダリンダ 作家名:伊達梁川