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リンダリンダ

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何かをやる予定があるのはいい、などと老人のような思いが浮かんでは苦笑する。ホームセンターの開店時間に合わせて家を出た。歩いて15分というのは運動になるのだろうか、少し早足で歩けば運動になる筈と自分でも意外に思うほど前向きになっているのを感じた。

店の前に並べられている花々を見てまわっても、夕べ手に入れた花は無かったのは当然だろう。それを確認しただけで、オレには誰も知らないような花があるんだと優越感を持った。優越感などという感情もあまり持てないまま生きてきたことは深く考えまい。私は、(さあ、鉢を買って花用の土と肥料も買って行こう)と売り場に向かった。普段は多数の買物の時に、買おうと思っていた品物を忘れてしまうことがあったが、今回は当初予定に無かった如雨露も買った。

◇           ◇

アパートに帰り、鉢植えの「鉢を買ってきたぞ」と口に出してしまって、まるでペットに対しているみたいだと思った。気分はペットなのだ、そう思わせる何かがあったのだ。

バケツに入れた水と土と肥料を持って、もう陽が当たっているベランダに出た。買ってきた素焼きの鉢に土を少し入れて夕べ手に入れた花の黒いビニールをつかんで、花の根元部分をそうっとつかみ引っ張った。
 「きゅうう〜きゅきゅ」
えっ、鳴いた? 他の場所からの音? 私はあたりを見回したが、それらしきものは見当たらなかった。普通は細い根が土とからまって簡易鉢のままの形でスポッと抜け出るのだが、大根かニンジンのように抜けた。オレは花と引き出された根の部分を見て驚いた。

えっ! 二本足じゃないか。興味を持ったオレはバケツの中でそれを洗った。たまにセクシーな大根などと新聞にも載ったりするあれだ。しかし、これはよりセクシーに思えた。それは何とくびれがあるのだった。地表に出ていたのが胸までの部分、その下がくびれて腰のような膨らみ、太腿から足先に向かって芸術的な線で出来ていた。さすがに最後は細い根であるが、誰が見てもこのフォルムは女性を思わせる。思わずオレはその芸術的なラインを手でなぞった。

「きゅきゅ」 
鳴いた! 私は掴んでいたそれを落としそうになった。間違い無い、でも発声器官はどこだ。葉と花をざっと見ても分からなかった。でもいつまでもこうしていいのだろうかという思いがして、予定通り鉢に植え換えた。終わってから汗をかいているのに気付いた。予定より長い間ベランダにいたことになる。

真夏の直射は避けて、部屋の中に置くことにした。エアコン作動中だが、鉢はエアコンの一番あたらないベランダに通じる戸の前に置いた。

することが無くなるとよくしているようにテレビを点け、ケーブルテレビの番組表をチェックすると【リンダリンダリンダ】という映画が始まったばかりなのを確認し、見始めた。予想どおりブルーハーツの歌を題材にした音楽青春ドラマだった。あまり上手いとは言えないヴォーカルだったが、話が進んでいって最後の歌は感動的だった。

そうだ、あの鉢植えにブルーハーツの歌のまま【リンダリンダ】と名前を付けよう。いや、【リンダリンダ】は長いかな、などと考えて、結局【リンダ】と名前をつけた。

作品名:リンダリンダ 作家名:伊達梁川