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リンダリンダ

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オレの部屋に女の痕跡はみつからず、満足のいく結果が得られたのだろう。菜美は泊まってゆくとは言わずオレが駅まで送ってゆくという言葉に素直に従った。外はだいぶ涼しさを感じられるようになっている。
「今度、部屋の掃除をしてあげるよ」
「おう、うれしいね、じゃあ片付けて綺麗にしておかなきゃ、あれっ」
「はははは、面白いっ」
菜美は本当におかしそうに笑った。やはり笑顔はいい。

菜美がオレの腕をつかんだ。
「歩くの速いぃ」
「えっ、普通だとおもうがなあ」
「ゆっくり歩いて」
ゆっくりと歩いて駅に着いた。駅の電光掲示板によるとあと2分で電車が来るようだ。
「あ、いいタイミングだよ」
「今日はごめんね、おしかけて、楽しかったぁ。ありがとう」
「ああ、きをつけてな」
菜美が改札を入って行き、振り向いて軽く手を振った。オレも手を振る。一瞬間が空き決心するように菜美は後ろを向いてホームに歩き出した。

独身になって半年、菜美と親しくなって約1か月、オレはこんな風になるとは思っていなかった。(いいじゃないか)と思うと同時にリンダのことが頭に浮かんだ。ベランダに置くのは初めてだったことに気づく。(そもそも植物はベランダに置くのだろう)との思いに、軽く否定する自分がいる。(植物じゃない)オレは菜美と歩いた倍の速さでアパートに帰った。

部屋に入ってからまっすぐにベランダに向かった。
鉢は置いた所にあった。だが、リンダが居ない。さほど広くないベランダだ。洗濯機の周り、エアコンの室外機の周りにもいなかった。園芸用の土や肥料を持ち上げて探したがリンダはいなかった。
「リンダ」
名前を呼ぶが、どこかが動く気配も物音も無い。ここは2階だし、わざわざ入って持って行くものもいないだろうと思った。もし持って行くとしたら鉢ごとだろう。(下に落ちたか?)と見たが街路灯からの明かりのみで薄暗く見つからない。
オレは懐中電灯を持ち、階下の狭い庭に入って探した。
どこにも見当たらない。リンダは少し歩けるようだが、犬猫じゃないのでカメのようなものだろう。誰か他人に見つかったら大変だ。

「リンダぁ」と呼びながらアパートに近くをあちこち探した。何人かがオレを見ながら通り過ぎたが、犬か猫を探しているのだろうと思うだろう。

同じ場所を何度も廻って探し続けたがリンダは見つからなかった。部屋に帰り、もう一度ベランダを探した。居ない。念のために風呂場や台所、押し入れまで探したが見つからない。次第にあれは夢だったかとまで思い、布団に入ったのは深夜になっていた。

作品名:リンダリンダ 作家名:伊達梁川