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リンダリンダ

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部屋に入ると、まっすぐにリンダの所に行った。リンダは居なかった。普通に考えれば引き抜かれたと言える状態だった。鉢にはリンダが埋まっていた土が穴を見せている。えっ、オレはまだ酔っ払っている? いや、そんなことはない。オレは誰かが留守の間に入りこんだのかと思った。周りを見渡しても物色された形跡は無かった。玄関のカギも締まっていたのを開けて入ったし、ベランダ側の戸もカギがかかっていた。

よく見ると、こぼれた土の筋が見えた。部屋の中ほどでそれは消えていたが、明らかに偶然ではない筋だった。予想される線を辿った。台所には異変はなかった。トイレ? リンダがトイレに入っているという発想をして、苦笑してしまった。そのついでにリンダが水を求めて……という発想で、あっと思った。風呂場は黴がつかないように戸を開けたまま通気をよくしている。

洗面器には、冷めて水にはなっているがシャワーをした時に貯まったお湯がある。風呂場を覗いたオレは嬉しさと驚きで、呻き声のような声を出していた。
「うーーああ、リンダぁ」
リンダはまるで行水でもしているように洗面器に収まっていた。その姿はまるで西洋名画の裸婦像のようにで、両足に見える根がセクシーに見えた。最初に見た時には両足に見える所がほぼ繋がっていたが、今は離れていて完全に両足に見えた。

「ああ、リンダごめん。水が足りなかったんだね」
オレはその太腿に見える所を撫でた。
「きゅう〜〜」
リンダの甘えたような鳴き声。
そうだとオレは確かめたかった所を見るためにリンダを持ち上げた。セクシーな太腿の合流部分ではなく、お尻に見える部分だった。やはり少しだけ膨らみが大きいその場所はお尻に見えた。きゅっと引き締まり、垂れ下がっていないお尻。思わずオレは撫でていた。
「きゅいん」
リンダはまた別の鳴き声になった。
「おう、リンダはかわいいねえ」
と、言ってオレは自分を客観視し、テレた。

さて、リンダをどうすればいいのだろうと考えて、元に戻すことにした。水を足した洗面器に入れたまま抜け殻になった鉢の傍に戻り、リンダを鉢に入れようとした。リンダは両足を広げて鉢の縁を支えて入るまいとしている。あれっ、どこかで見たようなシーンだ。オレはどこで見たのだろうか?と記憶を探りながらリンダを鉢に入れようとするが、無駄だった。

「洗面器がいいのか?」
リンダの顔(花)が頷いたように揺れた。

もういつもなら寝ている時間だった。オレは洗面器のリンダを鉢の脇に置いてシャワーを浴びることにした。あ、あの別れ方だったからおやすみの電話くらいしておいたほうがいいかなと、電話をしてみた。菜美はすぐには出ず、寝ちゃったかなと思った時に繋がった。
「あ、こんばんは……ってのも変ね。おうちに着いたのね」
菜美の声には揺れがあり、歩きながら話しているようだった。
「ごちそうさまとおやすみの電話をしようと思って」とオレはこんな時間に菜美が歩いている訳を知りたかったが、ごくあたりまえのことだけにした。
「ありがとう、おやすみ」
菜美が短くそう言って切った。

オレは一日を振り返ってみて、全部夢の中の出来事のように思えた。

作品名:リンダリンダ 作家名:伊達梁川