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リンダリンダ

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CDはリピートになっていたのだろうか、また《情熱のバラ》が聞こえてきた。腕がしびれている。菜美がオレの腕枕で寝ていた。そうっと腕をどかす。菜美は目を覚まさなかった。腕のしびれが徐々にとれて行くのを感じながら辺りを見渡す。脱ぎ散らかしたオレの衣類が枯れ落ち葉のようであり、菜美のそれは椿の花のようであった。

曲が《リンダリンダ》になって、口ずさんでハッと気づいた。時計を見ると午後10時。リンダ、オレのリンダが帰りを待っている。夕方にも水を遣っているのだからそれを貰えないで萎れているかもしれない。まるで愛人の家で本妻のことを思い出したような気分だった。オレが起き上がった気配で菜美が目を覚ましたようだ。
「ん? 何時?」
「10時」
オレは帰り支度をしながら答えた。
「帰るの? 泊まっていけばいいのに」
「いや、帰る」
「何か怒ってるの?」
「いや別に、あ、今日はごちそうさま。おいしかったよ」
「何か怒ってるみたい」
まだ、納得していない様子で菜美が起き上がった。オレは菜美にキスをして帰るつもりだった。いざそれをしようとしたら、菜美が手で遮って「ねえ、他に女のひといるんでしょ、一緒に住んでるの」と言った。
「ええっ、いないよ、独り暮らしだよ」
もう玄関にいるオレを捕まえて菜美は「だったら、泊まっていってよ」と言った。
菜美はオレが泊まることが目的じゃなく、女の勘でリンダの気配を感じているのかもしれなかった。もちろんそれが植物だとは思わないだろうが、オレのふとした態度から女がいると感じているのだろう。そうは思っても、リンダはやはり他人に見せてはいけない。

「今度ね」とオレは軽く言って別れようとした。
「じゃあ、わたしも一緒に行く」
どれだけ本気でオレを好きになったのだろうか、オレはまだ菜美のことはよく解っていなかった。
「とても人様にお見せできる部屋じゃかいから、いずれそのうちにね」
「掃除、片付けは得意だよ」
菜美は真剣な顔でそう言ったので、オレは困ってしまった。オレは菜美を抱きしめた。その身体は数時間前とは別人のように硬く感じた。そのまま少しずつ解凍されるように菜美の身体は軟らかく感じられてきた。
「おやすみ」
菜美は無言のまま頷いた。

菜美は本当にオレを好きになったのだろうか、オレは本当にモテるのだろうかということを考えながら駅に向かった。ふともしかしたらという思いで、後ろをみた。沢山の人々が歩いている中で一人不自然な動きをしているように思えたが、気のせいだろうか。菜美の性格のことはまだよくわかっていなかった。夜になっていくらか涼しいとは思うものの、歩いていると汗が出てくる。ああ、リンダ、暑い室内で大丈夫だろうかと、思いはリンダに換わった。

作品名:リンダリンダ 作家名:伊達梁川