詩集 風の刻印
簒奪の歴史
耐えることは、楽だった
そこにあって少しも動かぬ
どっしりとした川底の石のように
または、大地を掴む木の根のように
謀略の道具になるために産み落とされ
隣国の衣装を身にまとい
風化しきった石碑のように玉座に座る
その矛盾と理不尽の中から
逃げ出すことは許されず
やがて、そんな考えすら消されていった
それが
まわりをどれだけ苦しめたことか
全てを奪われたその日
耐えることしか知らなかった川底の石は
大きな嵐に
その濁流にひっくり返され
流れの緩い下流に静かに落ち着いて
また新たな小石が
その後を埋めた