詩集 風の刻印
風の記憶
風は希望を裏切った
そうやって
幸福を求めてあえぐ者のすぐそばを通り抜けながらも
か細い光に縋りつく骨のような腕を嘲笑うのだ
記憶は
すでに灰となって風に攫われ
または湿って地面に貼りつき
星へ還った
はかなき瞳を握りつぶしたもの
全てを得て膨らんだものだけが
はじけ飛んで流れを作る
時は満ちた
かつて流された血の雨は
大地に吸い込まれ乾くだろう
もはや
平和を謳うその手に戦禍はない
禁じられた言葉はその封印を解いた
倦怠していた風の記憶は
再び新たな流れを求める
定められぬ道は
大いなる存在によって
定められるのだろう
かつて時がそうしてきたように
欲望は回想の旋律を奏でる
十億の星に一の生命が存在するのならば
彼らは二十億の絶望を生むだろう
追い風の道をあえて振り向き
記憶の責め苦に耐え続けるのならば
それは、
歴史の守護者たるものなのだ