青いバラは遅く咲く
1,出会い
走る。走る。走る。ひたすら走る。
「後ろを振り返るな!走れ!」という最後の警告に従ってただひたすらに走った。
自分がどれだけ進んだのか、後ろから追いかけてきていた相手をすり切れたのかも分からないが、ただ分かるのは森を抜けたということだけ。
痛い。切り裂かれた傷も走り続けた疲労で痛覚が衰えているにしても、痛い。
冷静な判断ができている自分が自分じゃないみたいだ。
そして。
そして、置いてきてしまった。
自分一人逃げてきたのだ。
もう、自分には、帰る場所なんて残されていないのだ。
そう考えると、なんだかこの傷なんかどうでもよく思えてきてしまう。
「だいじょーぶ?」
不意に声が聞こえて顔を挙げると、人間で言えば5歳くらいの少女が私の前に立っていた。
ふらふらと走っているうちに人里近くまで来てしまったのだろう。
少女の手には花があって、その花は今の私の状況にはふさわしくないくらい鮮やかな色をしていた。
私は答えない。
少女は何を思ったのか、それとも何も考えてないのだろうか、私の近くまで歩きよってきた。
私が魔獣であったなら。と考えないのだろうか。
「けがはいたいから、たいへん。なおそう。」
少女はそう言い、私を抱えて歩き出した。
眠い。
どうせ私には帰る場所はもうないのだ。
だったら、もう、なるようになれだ。
疲れた・・・・。