代償 (旧人間ドック)
蘇る記憶
問診が終わり、部屋で帰り支度をしていると、同室の男が帰って来た。
「やっと帰れます。面倒かけました」
男は祐二に挨拶をした。
「言え、こちらこそお世話になりました」
「検診は初めてなんで、面食らいましたよ。柏瀬先生が受けろって言うもんで、俺なんか何時死ぬか解らねえからと言ったんですがね」
「柏瀬先生と知り合いですか?」
「まァ、助けたんですよ。仕事ですから金を頂いて」
「差し支えなかったら教えてくれないかな。私も知り合いなんですが・・・ご主人と」
「その御主人が馬鹿をやらかしたんです」
「馬鹿をですか」
「悪い女に騙されたって言う訳。その女には悪い男が付いていた訳」
「あんなおとなしい男が」
「年をとって覚えた遊び事は止められないって言うじゃないですか。なんだかんだと金を巻き上げられて、別れ話を出すと男が出て来たんですよ。俺と柏瀬先生とはいとこなんですよ。それで話をつけてやった訳」
「病院が閉まっているのでどうしたのかと心配していたんです」
「あの家も売ってしまったんです。夫婦は離婚。5歳の女の子は柏瀬先生が引き取ったんです」
「女の子がいたんですね」
祐二は驚いた。
日光の帰り、車で別れて6年ほど過ぎた。相沢との約束でそれ以来お互いに逢うことを辞めたのだ。
今さら柏瀬愛に子供の事を聞く事も出来ないだろう。
祐二は男に5000円を渡し
「ありがとう。飯の足しにしてください」
と言った。
男は
「ニコチン切れなんで帰ります」
と言いながら部屋を出た。
相沢は何で女に狂ったのか、恵子の言葉を思い出した。
「相沢先生ったら、何も知らないんだから、しゃぶってあげたら、『そんな下品な』って言うのよ。それで辞めたら『気持ちいいですから・・お願いしますですって』それで朝方もお願いに来たのよ」
確かに愛も初であった。相沢夫婦はセックスに関してはノーマルなことだけで楽しんでいたのだろう。
問診が終わり、部屋で帰り支度をしていると、同室の男が帰って来た。
「やっと帰れます。面倒かけました」
男は祐二に挨拶をした。
「言え、こちらこそお世話になりました」
「検診は初めてなんで、面食らいましたよ。柏瀬先生が受けろって言うもんで、俺なんか何時死ぬか解らねえからと言ったんですがね」
「柏瀬先生と知り合いですか?」
「まァ、助けたんですよ。仕事ですから金を頂いて」
「差し支えなかったら教えてくれないかな。私も知り合いなんですが・・・ご主人と」
「その御主人が馬鹿をやらかしたんです」
「馬鹿をですか」
「悪い女に騙されたって言う訳。その女には悪い男が付いていた訳」
「あんなおとなしい男が」
「年をとって覚えた遊び事は止められないって言うじゃないですか。なんだかんだと金を巻き上げられて、別れ話を出すと男が出て来たんですよ。俺と柏瀬先生とはいとこなんですよ。それで話をつけてやった訳」
「病院が閉まっているのでどうしたのかと心配していたんです」
「あの家も売ってしまったんです。夫婦は離婚。5歳の女の子は柏瀬先生が引き取ったんです」
「女の子がいたんですね」
祐二は驚いた。
日光の帰り、車で別れて6年ほど過ぎた。相沢との約束でそれ以来お互いに逢うことを辞めたのだ。
今さら柏瀬愛に子供の事を聞く事も出来ないだろう。
祐二は男に5000円を渡し
「ありがとう。飯の足しにしてください」
と言った。
男は
「ニコチン切れなんで帰ります」
と言いながら部屋を出た。
相沢は何で女に狂ったのか、恵子の言葉を思い出した。
「相沢先生ったら、何も知らないんだから、しゃぶってあげたら、『そんな下品な』って言うのよ。それで辞めたら『気持ちいいですから・・お願いしますですって』それで朝方もお願いに来たのよ」
確かに愛も初であった。相沢夫婦はセックスに関してはノーマルなことだけで楽しんでいたのだろう。
作品名:代償 (旧人間ドック) 作家名:吉葉ひろし