「夢の中へ」 第十話
「ええ、そん感じがしてならないのです。ここにつれてこられた目的が終わった以上、私の存在はこの時代には不要になるはずです。
見えない力で引き戻される時が来るかもしれないと不安になっています。恐れずに言うなら、私が来た目的とは信長様を光秀様が討つ!と言うことだったのかも知れないのです」
「母上さま、藤子にはそのようなお話し、信じられません。母上さまが信長様を討たれたわけではないのなら、世の中の単なる流れにしか過ぎないと藤子には思われます」
「藤子、世間はそう見るかもしれません。しかし、私は侵してはならないと言いながら光秀様に次の天下は豊臣秀吉さまだと申し上げてしまいました。
つまり信長様ではなく、光秀様でもない、そう申し上げたのです。そのことが本能寺の変にかかわっていたような気がするのです」
「まどか、つまりは・・・おまえが光秀様をそそのかすために連れてこられたというのか?」
「私には枕元に立った武将が誰だったのか解りません。幼い子供の魂も誰だったのか未だに解りません。
桶狭間の決戦で敗れた今川方の武将であるとすれば、藤次郎様に引き合わせたことも理屈が合います。私の使命は藤次郎様と婚姻して藤子を生むことだったのかも知れません」
「どういうことなんだ?まどか」
作品名:「夢の中へ」 第十話 作家名:てっしゅう