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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第十話

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「あなたが藤子のためにここへ来る決断をしたことが始まりだと考えれば、その後のことがつながってきます。もし藤子が生まれていなかったら、ここへは来ることがなかったでしょう。そして、光秀様が市に来られた折に藤子が泣き出さなければ、お目にかかるようなこともなかった。
まして私の顔が光秀様の幼き頃の親しき女子(おなご)に似ていたという事は偶然ではないように感じられるのです。
私の母はここの近くの出身です。先祖をたどればひょっとして光秀様のそのお相手の女子に近づいてゆくのかも知れないのです」

「なんと言うことだ・・・にわかに信じがたい話だが、まどかのいうことはどれもつながってくる」

「藤子は・・・母上さまと離れません!父上とも離れません。何が起こってもそれだけは変わりません」

「私とて同じ思いです。そなたを置いて元の世界に帰りたいなどと思ったことはありませんよ。それに今は母も27歳。ここに来た時は15だったからこの姿で元の世界に戻っても暮らせません。今はそういうことが起こらないように祈って暮らすだけです。全てを話したことは何が起こっても母の事を信じて欲しかったからです」

「まどか、余計な心配事はするな。何も起らないし起こさせない。藤子と一緒に末永く暮らすんだ。いいな!」

「そうですね。そう願いましょう。藤子はそろそろ大人になる頃ですね・・・何も心配することはないから、母はどこへも行かないからね」


幸せを壊して欲しくなかった。父や母に会いたくないとは決して思わない。どうしているのか心配はある。向こうだって自分のことを行方不明だと案じて暮らしているだろう。
藤次郎と藤子を伴って帰れたら・・・いやそんな事は奇跡が起ろうともありえないことだ。

いつか今の枕元にあの武将が立ったら、ここで暮らしたいと言おう。帰りたくないと拒もう。まどかはそう考えることにした。