富裕層会議
第4回会議 外に敵をつくれ
民衆の不満は一時はおさまっても、再び増大した。
「みんなここ二十数年の私たちのやり方に嫌気が差しているようだ。まだ、私たちに矛先は向いていない。今度はどうやって、それを逸らそうか」
「こうなったら、外に敵をつくるしかないわ。そうだ、秘密工作をしましょう。テロ事件を起こすのよ。それを、どこそかの訳の分からない国から送られてきたテロリストが起こしたことにして。私たちの国に嫉妬と敵対心を抱くならず者国家のせいだから、そいつらを叩くためにも、国民国家結集しましょうとキャンペーンを張るの。みんな指導者に対して右へならえよ。もちろん、その指導者を雇っているのは私たちよね」
「そうか、どこの国のテロリストにしようか」
「どうせなら、石油の取れるところがいいわ。資源をがっぽりいただきましょう」
「報復と称してど派手な戦争を仕掛けようぜ。そのための兵器は私たちの会社から提供。もちろん、対価は税金から、がっぽりむしり取る」
「でも、誰が戦場に行くの? 私たちの子供たちを行かせたくないわ」
「大丈夫さ、民衆の中の貧しい連中が志願してくれる。そのためにも格差を広げたんだ。貧しくて、学もないから、ろくな職に就けない。食うにも困る奴らの働けるところといったら、軍隊しかないんだ。奴らに鉄砲玉になって貰おうぜ」
「まあ、ずる賢いったらありゃしないわね」
「怪我したり、死んでしまったりしたら可哀想ね」
「メディアでヒーロー扱いするのさ。真の愛国者として扱うのさ。愛国心高揚に役立てよう。どこかで神として祀られるといいよな。いわゆる軍神としてな。他にとりえのない彼らだから、それで大喜びさ」
そして、テロ事件が起こり、戦争が始まった。愛国心が叫ばれ、政府もメディアも煽り、民衆も煽りに乗った。貧しく軍隊に入隊するしかない貧困層の若者は、それに乗り、愛国心から志願したとのだと自らを誇った。
だが、戦争は苦戦だった。兵器では勝るものの、ゲリラや持久戦に勝る敵の抵抗は思わぬものであった。長引く戦争で、国家予算は逼迫、社会はますます疲弊していった。反戦運動と共に、政治不信が増大した。そして、そろそろ、その政治を動かす富裕層に民衆の矛先が向けられそうになった。
数年後、第五回会議で対策を話し合うため富裕層たちは集まった。