富裕層会議
第3回会議 生贄を差し出せ
「おいおい、民衆からこんなに努力しているのに、自分たちの生活は苦しいままだと不平不満が抑えきれないほど高まっているぞ。これだと、希望の星を使った覚醒剤の効果は切れ始めているようだ。どうしたらいい?」
「次は、生贄作戦さ。生贄のヒツジって知っているか。民衆の不満を別の対象に移す作戦さ。悪者は、私たちではない。こんなひどい状況にしているのは、別の連中だと。そうだ、一番いいのは、不法に入国して働く外国人労働者、肌のできるだけ黒いのがいい。そして、生活保護で生きている落ちこぼれ連中だ。奴らが、仕事を奪い、税金を払わず、むしろ、払った税金を浪費して、公共サービスを低下させ、自分たちを苦しめていると吹聴するんだ。そうすれば、民衆の不満は、みな、その外国人と落ちこぼれ連中に集まる。どうだ?」
「それはいい手だ。さっそくメディアを使って、生贄作戦を実行しよう」
会議でまとまった提言は、メディアを使い実行された。民衆の不満は不法滞在外国人と生活保護受給者に向けられた。政治家は、メディアと一緒に煽った。自分たちの失策から目をそらし、奴らをバッシングの対象として、その民衆の情動を掻きたて、それに応える政策を公約に掲げて、票につなげるためにも。当選した政治家たちにより、不法移民の取締りはどんどん強化された。生活保護の予算は、どんどん削減された。
だが、不法移民自体は減らない。むしろ、アンダーグランド化して、ますます危険な労働を請け負ったり、代わりに犯罪に手を染めることになった。それは生活保護受給者でも同じであった。生活保護を受けられなくなり、餓死するものもいれば、やも得ず、犯罪に手を染める人々が増大した。
治安が悪化した。治安の悪化は脅威であった。そこで、犯罪の取り締まり強化が、民衆受けする格好の政策となった。自分たちの持ち分が減る警察予算を増やすことは富裕層たちが許さない。代わりにしたのは、捕まった犯罪者のつるし上げ、刑罰の重罰化、死刑の増加だ。
それから数年後、第4回会議が開かれた。