小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

D.o.A. ep.34~43

INDEX|24ページ/34ページ|

次のページ前のページ
 

Ep.41 風の主




樹齢100年を遠い昔にこえた大木群の中、血に飢えたけだものの群れは急進する。
視界はせまいが、オークたちに警戒の色はない。
松明に揺れる炎を掲げ、我先にと静寂を踏み荒らしていく。
時折低い低い呻りをもらしつつ、ここにいるであろう少年と、その同胞を発見せんと進攻する。
「何処ダ…何処ニ、イル」
「サガセ」
「逃ガサナイ」
「アノ方の為ニ、アノオ方ノ為ニ」
各々が絶対者を胸にえがき、目を皿のようにして捜索する。
どこまで進もうと、背後から感じる気が、早く連れて来い、と無言の圧力を放つのだ。
気の短さは折り紙つきで、それを知っているオークたちは、焦燥してもいた。

「おまえたち―――止まれ!」

樹のかげから何者かが勢いよく飛び出し、騒然となる。
二人だった。
高らかに制止の声を上げたのは、肩に白い鳥を乗せた銀髪の小さな子供だ。
そのやや後ろに、黒髪に淡い緑の瞳をしている少年の姿があった。
その姿をよくよく確かめて、求めていた標的、ライル=レオグリットであることを知る。
いっそ森に火を放ってしまえば、探すまでもなく簡単にいぶり出すことができただろうが、あいにくそこまで知恵のまわるものはいなかった。
銀髪の子供――レーヤは、両腕をめいっぱい広げて、オークを射抜くように見据える。

「…ここから先、行かせない。絶対行かせない」
「俺を狙ってんだろう。残念だけど、捕まってやるつもりはない。ここから出て行きな」

無駄と知りつつも、レーヤに続き悪鬼どもに向けて告げる。
それを、やはり挑発と受けとったらしく、にわかに色めき立って各々が武具をかまえだした。
レーヤは負けじと睨みかえすが、もとより幼い少年どころか、屈強な男の威圧にもひるむ連中ではない。

「…見ツケタ」
「早ク」
「早ク」

先頭に立つ、瘤で眼が片方つぶれたオークが、気味の悪い動きで、じりじりと二人に近寄っていく。
ロノアで調達したのか、先の闘いで見たオークよりは、仕立てのよい武具を携えていた。
オークと斬りあった事は一度や二度ではない。
その経験からして、たいした個体差はなかったので、同等の力量を持った戦士が揃っていると見てよい。
ただでさえ数では五倍以上の差があり、戦力差を考えると十倍以上かも知れない。
幸いなことに、ここは開けた場所ではないので、うまく森を利用すれば、一度に数体を相手にしなくても済むだろう。
ライルは、得物をことさらゆっくりと鞘から引き抜きながら思案する。

「早ク―――アノ方ノ元ニ!」
悪鬼が吼え、血走った眼で突進してくる。
「どいてくれレーヤッ!」
戦えるなどと意気ごんではいたが、現実的に考えて、こんな小さな子供が戦力となるわけがない。
ライルはあわてて、前方に立ちふさがっている小さな体を、後ろへかくまおうとした。その時。

「行ってアル。…ううん、―――アールヴヘイム」

白い鳥が舞い上がり、光になるのを見た。
それはまさに光のような速さで、オークの群れへ直進する。
襲いくるオークの群れの隙間を、その速さで潜り抜けるように飛び、身をひるがえし、淡い軌跡をえがきながらレーヤのもとに返ってきた。
殺気立っていたオークたちは、ふとおかしな感覚にとらわれる。
思うように下半身が動かないのである。
無理に動かそうとした次の瞬間―――その体は上半身と下半身、真っ二つに両断されていた。
「―――!―――!!」
地べたに滑り落ちた上半身たちは、うつ伏せに這いつくばって、喘鳴と血を口から吐き散らす。なすすべもなく死を迎える。

前方の同胞に突如起こった異変によって、後方に広がった動揺を、ライルは見のがさない。
痙攣する下半身から鮮血があふれる刹那、彼は得物を手に、化け物どもへ飛びかかる。
一瞬で身近にせまった脅威に対処すべく反応を起こしかけるが、そんないとまは与えてやるまい。
まずは一体目、と、つるぎを振りかぶった。



*******


作品名:D.o.A. ep.34~43 作家名:har