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第３章　代役

　艦から発艦した山口たちのジンは、周囲を警戒しながら、ブリッジの様子をうかがってみた。

　ブリッジは地獄絵図になっており、悪魔たちが意気揚々としていた……。その悪魔たちの周りには、ザフト兵の死体が転がっていた……。
「今すぐ息の根を止めてやる！！！」
ベータはジンの銃をブリッジに向けた。

「避けろ！！！」

そのとき、ディスプレイを見ていた山口が叫び、ベータは反射的に避けた。次の瞬間、すぐ横をビームが通過していった。
「二機の敵モビルスーツが近くにいる」
「あれだな」
ベータがそう言ったとき、ザフト艦の影から二機のモビルスーツ『ジム』が姿を現した。そのすぐ横には、敵ジムの残骸が一機分あった。ザフト艦の対空攻撃により撃墜されたようだ。そして、そのさらに向こう側には、エンタープライズＰ・０が見えた……。

　敵の二機は二手に分かれ、ジンを攻撃してきた。
「アルファたちの仇だ！！！」
ベータはそう叫ぶと、そのうちの一機を狙撃した。
　ジンの弾は見事命中し、撃たれたジムは爆発した。
「もう一機を倒したら、エンターなんとかという艦を倒すぞ！！！」
ベータは強くそう言ったが、
「オレたちだけでは無理だ！」
山口は反対した。だが、ベータは考えを変えるつもりはないようだった。

　ジムは、ジンの攻撃をうまく避け、狙い撃つベータをイライラさせた。山口は、ディスプレイを眺めているしかなかった。しかし、エンタープライズＰ・０へ次第に引き寄せられていることに、山口が気づくのは遅かった……。また、ベータも、敵を狙い撃つことに夢中で、気づかなかった……。

　　　ガシャン！！！

　激しい金属音と振動が、ジンを襲った……。強力な磁石がついた鎖が、ジンに張りついた。それは、『グラップラー』という、エンタープライズＰ・０に搭載されている捕捉装置だった……。
「なんだ！！！」
ベータが当然のセリフを吐いた。
「エンタープライズＰ・０の捕捉装置に捕まった！！！　鎖を切れ！！！」
山口がそう叫ぶと、ベータは、ジンとエンタープライズＰ・０とを結んでいる鎖を銃で切ろうとした。

　　　ガシャン！！！

　しかし、また強力な磁石がついた鎖がジンに命中し、その衝撃で、ジンの手から銃が離れていってしまった……。ベータは、ジンに銃を拾わせようとしたが、捕捉装置に引っ張られ、拾うことはできなかった。
　ジンは山口たちを乗せたまま、エンタープライズＰ・０へと引っ張られていく。あの敵モビルスーツが見張っているので、ジンから脱出しても無駄だといえた。
「……これで終わりか」
ベータが悔しそうに呟く。
「わざわざ捕まえたんだから、すぐに殺されることはないだろうよ」
山口が呑気そうに呟く……。