CROSS 第19話 『Visitor』
山口たちは、アルファとベータの部屋についた。テーブルの上にはノートパソコンが置かれており、重要そうな別のスーツケースがベッドの脇に置かれていた。
「ほら、特別におまえの私物を返してやるよ。いらない物だから」
ベータは机の中から、山口の拳銃『FNファイブセブン』やCROSSと紅魔館のバッジなどを取り出すと、山口に渡した。
「どうも」
山口は礼を言うと、自動小銃を捨て、その拳銃のマガジンに魔力を注ぎこんだ。
「じゃあ、すぐに行こう」
山口は促した。アルファとベータは、急いで荷作りをしていた。少し時間がかかりそうだ。
そこで仕方なく、山口はこっそり、CROSSと紅魔館のバッジで通信してみた。しかし、ニュートロンジャマーか何かからの妨害電波のせいで、雑音が入るだけだった……。
「ぎゃ!!!」
そのとき、クローゼットを開けたアルファが短い悲鳴をあげた……。山口とベータが、彼を見たとき、彼は首を切り落とされていた。首無し死体となったアルファは、その場で力無く浮かんでいた……。
クローゼットの中に悪魔が隠れており、クローゼットを開けたアルファを襲ったのだった……。悪魔の鋭い爪に血がついていた……。
「この化け物が!!!」
ベータは叫びながら、何発もの魔弾を悪魔に喰らわせた。撃たれた悪魔はクローゼットの中で倒れ、不思議な色の血液が、クローゼットの中にかけてあった服を汚した……。
「よくもやりやがったな!!!」
アルファはクローゼットの中で死んでいる悪魔に向けて連射した。そして、死んだアルファのポケットから、彼の遺品となる物を手にした。
「長居は危険だ」
山口はそう言うと、部屋のスライドドアを慎重に開け、ドアの周りを警戒した。
「この2つのスーツケースだけは持っていく。モビルスーツまで護衛を頼む」
ベータはスーツケースを両手に持っていた。無重力とはいえ、重くて邪魔そうだ。
山口とベータは、格納庫へ足早に進んだ。先頭の山口は、後ろのベータから道案内されながら、ピストルを構えている。
道中、二匹の悪魔と遭遇したが、山口がすぐに射殺した。ただ、ザフト兵とは一人も遭遇しなかった。
「たぶん、この艦で生き残っているのはオレたちだけだぞ」
「なぜ、連中はわざわざ乗りこんできたんだ? 皆殺しにするなら、艦を撃沈したほうが早いのに」
「この艦を手に入れたいんだろ。悪魔連合軍は、艦船を次々に鹵獲して、使っているらしいからな」
「そういうことか。じゃあ、モビルスーツでこの艦を破壊しないとな」
「そんな余裕は無いと思うぞ」
そして、山口たちは格納庫の前についた。格納庫に入る前のエアロック室で、異次元空間でも使用できるようになっているノーマルスーツ(宇宙服)に着替える。
「悪魔は真空でも生きられるのか?」
ベータが着替えながら尋ねた。
「ほとんどの悪魔は無理だな」
「じゃあ、この格納庫に味方がいるかもしれないな」
「乗りこんできたのは悪魔だけじゃないだろうな」
「普通の敵もいるかもしれないということか?」
ベータは嫌そうな顔をしながら着替え終わった。
「そういうこと」
山口も着替え終わり、再びピストルを構える。
ベータは、エアロック室から格納庫へのドアを開けた……。
作品名:CROSS 第19話 『Visitor』 作家名:やまさん