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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第九話

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信長の死は瞬く間に全国に伝えられたが、柴田勝家は北陸で上杉と応戦中、滝川一益は信州で北条家と睨みあい、丹羽長秀は織田信孝(のぶたか)と四国に、羽柴秀吉は備中で応戦中と京にもどれる家臣は居なかった。
畿内の混乱から逃げ出すように家康は僅かな手勢を引き連れて国に引き返した。このときに手柄を立てた伊賀衆を後に指南として重用している。

光秀は京都周辺を掌握して、触れを出し人民の混乱を回避させた。宮中にも同様に根回しをして何事も相談して政に当たると申し送っていた。
信じられないスピードで姫路城まで引き返してきた秀吉の軍勢は織田家の京周辺にいた武将達と合流し、丹羽長秀や織田信孝(信長の三男)らとも合流して、信長の敵を討つという大儀名分を立てて、山崎に進軍した。

光秀は考えていた。
秀吉が天下を獲るという暗示をまどかから聞かされていたことだ。
だとしたらこの戦いも自分が敗れ、秀吉が織田家の家臣をまとめてこの国を治めてゆくのだろう・・・と。

信長を討った事は多少の私怨もあったが、この国の安定のため、民百姓の暮らしを守るためだった。そして自らの敗北が平和へと帰結してゆく・・・
神に祈るように、腹を決めた。
傍に居た秀満(明智秀満、光秀の養女を妻として明智姓を名乗っていた)に申し伝えた。

「秀満、これから申すことを肝に銘じて必ず成し遂げよ。解ったな」

「はい、光秀様・・・何なりともこの秀満に託してくださりませ」

「うむ。そちはすぐに坂本へ引き返して、ひろこと光慶を安全な場所に移してくれ。そして城内にいる全ての者たちを放免せよ。
城に残るのはそなただけじゃ。光秀が到着するまで持ちこたえよ」

「しかと・・・心得ました」

「行け!」

早馬を飛ばして、秀満は坂本へ向かった。