球体地獄
アナトミックムーン
アパートの理科室を抜けだすと
球体関節を駆使して
90度を見上げる頚椎
そこには
ぬばたまの夜空の星無き天蓋に
爪で開けたような月
家庭科室の包丁逆手に
丹念に丹念を重ね
半身の皮を剥ぎ取ったw
幸い出血も少なく
僕は校門から外に出て
夜空の爪痕から差し込む
ほっそいほっそい月光
その特設のやり場なきステージに
ぎこちなく身をさらしたギコギコ
月の細光は
蛍光灯よりやさしくて
ただやさしくて
僕は人間を思って泣いた
風が吹いても
桶屋は儲からず
僕が痛いだけ
僕はアナトミー
今宵 街 人 星 すべて
半身曝して
『人体模型の夜』